83「訓練のはじまり」②
二時間後。
レダとエンジーはナオミの指導を終えて、地面に倒れていた。
「……エンジー、生きているかい?」
「ギリギリ生きています。でも、魔力が、枯渇しました。初めてです、ここまで、魔力使ったの」
「俺もだよ……魔力多いはずなんだけど、ここまで消費するって……ちょっと信じられないかな」
日差しが暑いが、動こうとさえ思わない。
ナオミが発した聖属性の力を感じ取ることに成功したが、すぐに自らの聖属性を発しろという訓練が始まった。
今まで意識しておらず、無意識に使っていた力を意識して使うということは、とても難しかった。
自分の中に聖属性があるのか、という疑問が浮かぶほど、繰り返し力を発する。
休みなく力を巡らせ、魔力が枯渇しかけ、もう倒れるというところでようやく自分の中に今まで見ていなかった力を見つけることができた。
そして、そこで気が抜けて倒れてしまった。
エンジーも同じだったようで、聖属性が自分の中にあったことに安堵している。
「魚を獲ってきたのだ。今日はこのくらいにして、食事を摂ったら魔力回復のために眠るのだ! 明日は、魔法に聖属性を乗せて使う訓練をするのだ! 成功すれば、あとはどれだけ消費を少なくして使うことができるのかを繰り返すのだ!」
「す、スパルタだね」
「でも、結果が伴ったことがよかったです」
「そうだね」
エンジーはレダ以上にやる気に満ち溢れている。
辛い、しんどい、挫けそうと弱音を吐きながらエンジーは決して訓練をやめなかった。
「エンジー」
「はい?」
「いや、なんでもない」
なぜそんなにも頑張るのか、と尋ねようとしてやめた。
「災厄の獣」と戦うことを絶対に嫌だと言っていたエンジーが、急に戦う気になっている。
それこそ、治癒士としての訓練よりも、全力で取り掛かっている気がするのはきっと気のせいじゃない。
戦いと縁のなかったエンジーが、急にこの変わりようだ。
間違いなく、なにかレダには知らない理由がある。
そのことを尋ねていいものかどうなのか、考えて、今はまだその時ではないと考えた。
もし、エンジーから話してくれるのであれば、ちゃんと聞こうと思う。
(エンジーのやる気はどうあれ……少し危うく感じるんだよね。彼にはなんとしてでも生きて帰ってもらわないと)
ミナが弟弟子として慕っているエンジーを失うことは絶対にあってはいけない。
ナオミだって同じだ。
そして、レダ自身も絶対に死ぬわけにはいかない。
愛する家族がいる。
故郷にも帰りたい。
友達にも会いたい。
街の発展が見たい。
――自己犠牲が強かったレダ・ディクソンは、守るべき家族たちのために、生き残ることを第一に決めた。その上で、絶対に「災厄の獣」を倒すとも誓った。
〜〜あとがき〜〜
お人好しで自己犠牲が強かったレダも、ミナとルナをはじめ家族のおかげで成長しています。
「災厄の獣」と戦うまで、もう少し。
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