77「修行の時間」①
――翌朝。
「おはようございます、レダ先生!」
診療所を開けたレダを出迎えたのは、力強いエンジーの挨拶だった。
「お、おはよう。なんていうか、今までのエンジーの中で一番元気一杯だね」
「はい! 僕は頑張ります!」
「う、うん。昨日までのエンジーもとても頑張っているように見えたけど」
「今日からより一層頑張ります!」
「が、頑張ってね」
「はい!」
口調も、態度にも力が入っている。
力みすぎている気がするも、元気であることは悪くない。
レダとしては、エンジーの張り切るきっかけを気になりもするが、水を差すのは違うと思い、言葉にはしなかった。
「あ、エンジー! おはよう!」
「おはようございます! ミナ先輩!」
「う、うん。……エンジーちゃんと寝た?」
レダの後ろから顔を出したミナがエンジーに挨拶をすると、元気一杯の挨拶が返ってきたので目を丸くしていた。
(ミナ視点でもエンジーはちょっと元気良すぎるんだよね。……というか、今、エンジーに気づいておはようを言いに来た気がするんだけど……お父さんの気のせいかな? 気のせいだよね?)
テックスやネクセンにもミナは笑顔で挨拶をしている。
出会ったばかりの頃、人に警戒心があった少女は今では人懐っこくなっていることが嬉しい。
――しかし、どことなくエンジーだけ違うと思う。
(――まあ、いいか)
ミナは大事だし、お嫁に出したくないと思っている。
無論、大事に自分のもとでずっと――とは考えていない。
いずれは自分のように愛する人と出会うだろう。
もしかしたら、その相手がエンジーの可能性がないわけではない。
とはいえ、ミナの態度はどことなくエンジーを特別扱いしているが、弟扱いしているような面もある。
そのせいだろうか。
レダも見守ろうと思ってしまうのだ。
「ぐっすり眠りました! 不安も憂いもなにもありません! このエンジーにお任せを!」
「……寝てない気がする」
「寝ましたとも!」
「……お父さん」
「うん。徹夜のテンションだよね」
「もう! エンジーったら、ちゃんと寝ないと仕事に差し支えちゃうよ! まだ時間あるから、こっちで眠ろう?」
「いえ! 問題ありません、ミナ先輩! 眠くなんてありません、ギンギンです!」
「ぜったい大丈夫じゃない」
ミナはエンジーを心配しているが、レダも同じだ。
やはり災厄の獣や、彼が聖属性の力を持っていることを伝えた判断は間違いだったのかと、考えてしまう。
少しずつだが成長し、一番重要な場面で力を発揮できるエンジーなら、大丈夫だと思っていたのだと思っていた。
「エンジー、ごめん。昨日のことは」
「レダ先生!」
忘れてくれ、と言おうとして言えなかった。
エンジーの瞳には強い意志が宿っている。
思わず言葉を止めてしまうほどだ。
「僕は大丈夫です。――僕が、レダ先生たちを守りますから」
〜〜あとがき〜〜
エンジーくん一晩眠れませんでしたが、覚悟はゆるぎません!
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