69「家族との時間です」①





「おかえりなさい、パパぁ!」


 我が家に帰宅するとエプロンを身につけたルナが飛び込んできた。

 しっかり受け止め抱きしめる。


「おかえりなさいませ、レダ様」

「頑張ったな、レダ」

「おかえりなさい、レダ」


 ヴァレリーが微笑み、腕を組んだヒルデが労い、アストリットがレダの白衣を預かってくれた。


「みんなも手伝ってくれてありがとう。本当に助かったよ」

「妻ですもの」

「妻だからな!」

「……できることはなんでもするわ」


 ミナとルナだけではない。

 ヴァレリー、ヒルデ、アストリットも負傷した冒険者を必死に解放してくれた。

 治癒の順番待ちの冒険者を応急手当してくれたこともそうだが、仲間を失いひどく憔悴している冒険者たちを必死に励ましてくれた。


 聖女ディアンヌ、神父モリアンも手を血まみれにして手伝ってくれていた。

 エルザも応急処置の助っ人として、活躍してくれた。


 大きく成長したエンジーをはじめ、アメリア、ポールの存在も大きかった。

 ネクセン、ドニーという熟練の治癒士の活躍は言うまでもない。


 やはり、治癒士という存在は、各地に必要なのだと思い知らされた。


「さあ! ご飯にしましょう! パパが元気が出るようにたくさん作ったんだから! 太ることなんて気にせず食べてね!」

「……あ、あははは、ほどほどにしたいかな。そろそろお腹が出てきちゃうかもしれないんだ」

「パパはすらっとしているんだから、ちょっとくらい贅肉がついたっていいのよ!」

「……困るなぁ」


 ルナが悪戯っ子のように笑いながら食事を並べてくれる。

 ステーキ、ポテトサラダ、パン、スープをレダは美味しく食べていく。

 レダが美味しそうに食べると、ルナたちは嬉しそうに微笑む。




 ――ただ、気になることがある。




「ほら、エンジー。サラダもちゃんと食べないと駄目だよ?」

「は、はい。ミナ先輩。でも、俺、あまりサラダ得意じゃなくて」

「ルナお姉ちゃんと一緒に作ったんだよ? お芋のほうが多いから食べやすいと思うんだけどなぁ」

「い、いただきます!」

「うん! はい、あーん!」

「え?」

「あーん!」

「……あーん」


 レダの向かいに座るエンジーが、ミナに甲斐甲斐しく世話を焼かれているのだ。

 あーん、までしてもらっていることにレダはフォークを落としそうになった。


(あーん、はお父さんの特権だと思っていたのに!)


 なんとか冷静になろうと、しっかりフォークを握り締め、食事を再会する。

 だが、一度気になると簡単に意識を逸らすことはできない。


「……あらあら、ミナったらエンジーみたいな頼りない男が好きなのねぇ」


 ルナが感心したようにそんなことを言い、レダの心臓が止まるかと思った。


「もう、ルナちゃんったら。ミナちゃんは、姉弟子として弟弟子を可愛がっているだけですわ」


 ヴァレリーの言葉に、レダはほっとする。


「……でも、ほら、レダとエンジーってちょっと雰囲気が似ているじゃない? だから、ね?」


 アストリットが意味深なことを言うと、女性陣たちがにんまりする。

 その後、誰もミナとエンジーのことには触れず、見守っているだけ。

 食事は美味しかった。

 とても美味しかったのだが、レダは言葉にできないもやもやを持て余すこととなった。





 〜〜あとがき〜〜

 次回は、災厄の獣に関して家族とお話です。


 コミック最新9巻が発売いたしました!

 ぜひお読みいただけると嬉しいです! 何卒よろしくお願いいたします!

 双葉社がうがうモンスター様HP・アプリにてコミカライズ最新話もお読みいただけますので、よろしくお願いいたします。

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