63「報告」③





「待て、ナオミ殿! レダにいくら聖属性があるからといって、戦わせるものはどうなのか!? レダは治癒士だ。なにかあったときにレダのいるいないで被害者の生死が大きく左右されることもあるはずだ!」


 ティーダの指摘はもっともなことだ。

 だが、ナオミも負けず言い返す。


「治癒士はネクセンもいるのだ。ドニーのおっさんたちもいるし、聖女もいるのだ! だけど、聖属性を持って戦えるのは私以外ではレダだけなのだ!」

「――しかし」

「ティーダがレダのことを心配しているのはわかるのだ。私だって、できることならティーダをあれに関わらせたくないのだ! でも、あれは必ず来る! 時間がかかっても絶対に来るのだ!」

「……確信がある、と?」

「一度戦ってみればよくわかるのだ」

「……災厄の獣と戦うなど……一度だってごめん被りたいがね」


 ティーダは、大きく息を吐きレダを見た。


「どうする、レダ?」

「俺に聖属性の力があるのかどうか、まだ疑問ですが――戦えるのであれば、戦います」

「そう、か。いつだってレダはそうだな。貧乏くじを進んで引きにいこうとする。そんなレダがいるからこそ、アムルスは支えられていると言うのに――私は領主としても、友としてもしてやれることがない!」


 今にも泣きそうなティーダに、レダは微笑み、首を横に振った。


「そんなことはありません。ティーダ様とアムルスの街は、俺とミナを受け入れてくれました。ルナたちを受け入れてくれました。良き出会いがありました。かけがえのない家族ができました。そして、友達も」

「――レダ」

「俺は戦います。貧乏くじを引くとかではなく、お人好しの行き当たりばったりでもなく、大切な家族や友を守るために――できることならなんだってしますよ」


 レダは、珍しく不敵に笑ってみせた。


「忘れているかもしれませんが――俺だって冒険者です」


 ティーダははっとする。


「誰かを守りたいから、冒険者になりました。……まあ、一旗あげたいって気持ちのほうが大きかったんですが、それはまあご愛嬌ということで」

「……レダ、お前は」

「任せてくださいなんて言いません、正直、災厄な獣がどんな存在かもわからないですのでまだ怯えていないだけかもしれません。だけど、――最善を尽くします」

「レダ……本当に、いつも頼ってばかりで申し訳ない。だが、忘れないでくれ。レダには家族がいる。友がいる。アムルスの街がある。死なないでくれ」

「わかっています」


 レダが頷くと、ティーダがナオミに頭を下げた。


「ナオミ殿、レダのことを頼んだ」

「任せるのだ!」

「そして、あなたもこの街の住民であり、私の大切な領民であり、家族であり友だ。どうかご無事で」


 ティーダが心配しているのはレダだけではない。

 ナオミのことも同様だった。

 そのことに気づいたナオミは嬉しそうに笑顔を作ると、大きく首を縦に振った。


「――うん!」





 〜〜あとがき〜〜

 災厄の獣編はもう少し続きます。

 しばしお付き合いを。そのあとは王都編です!


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