45「午後の診察」
午前中の診察を終えて、昼休み。
レダたちは、ルナとヴァレリー、アストリットが用意してくれた昼食を食べ終えて、お茶を飲んでいた。
「エンジー、アメリア、午後は一緒に往診に行こう」
「わ、わかりました」
「はい!」
アメリアは、往診についていけることを嬉しそうに頷いた。
彼女は、診療所の中で受付の手伝いを中心にしている。
学ぶ意欲が強く、てきぱきと働く姿は効率がいい。
ただ、レダに付きっきりで学びたいと思っていることから、なんだかんだとレダと行動を共にするエンジーに若干の嫉妬を覚えているようだ。
エンジーは午前中は診療所で雑務を、午後はレダと共に往診をしていた。
極度の人見知りであるエンジーだが、アムルスの暖かい人々が若き治癒士に感謝の言葉と労いをかけると、少しずつ見知った顔の人たちには慣れてきていた。
聞けば、実家では、なにか失敗したり、人見知りのせいでうまく話せないと、叱られることが多かったようだ。
厳しく大きな声で叱責されると身がすくんでしまうというエンジーにとって、アムルスの人たちは暖かく、優しかった。
レダもそうだが、失敗しても怒鳴ることはまずない。その逆であり、ちっとやそっとの失敗では、暖かく見守ってくれるのだ。
エンジーもアムルスの人たちの前で、緊張と萎縮をしているが、大きな失敗をするほどではない。
彼は、物覚えがいい。
一度見聞きしたことは覚えるし、人の名前と顔も同様だ。
人見知りだったせいで、その記憶力と吸収力が発揮される機会がなかっただけだ。
レダは、そんなエンジーを連れて歩いた。
治癒士が患者のもとを訪れて気遣うことをしてくれるのは、アムルスだけだ。
レダは当たり前に往診をしているが、アムルスの住民たちは本当に感謝している。
街に来た商人たちは、治癒士が日夜問わず患者の元を自らの足で訪れることを心底驚いていた。
普通は逆だし、夜の治療などやっていない。
レダは知らぬことだが、最近では商人と冒険者がアムルスを拠点とするため移住してきているが、その理由の大きなところが彼の存在である。
そんなレダが弟子を取り、育てているのだ。
住民は歓迎しないはずがないのだ。
そういう意味で、人見知りのアンジーを育てるにはアムルスはとてもよい環境だった。
「ポールさんは、ネクセンとドニー様のお手伝いをお願いします」
「かしこまりました」
「ネクセン、ドニー様、よろしくお願いします」
ネクセンとドニーも弟子の育成に積極的だ。
「任せておけ」
「ドニー殿をお預かりしよう」
ネクセンは、兄弟子として面倒見がいい。
ドニーは、ネクセンやほか治癒士を育てた経験があるので、レダに助言をしてくれることもある。
彼の助言は的確で、治癒士としてももちろんだが、弟子を育てる師としても適切な言葉をくれる。
「よし。じゃあ、午後もよろしくお願いします!」
「――はい!」
〜〜あとがき〜〜
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