31「ドニー・ウェン」
挨拶を終えた一同。
「じゃあ、挨拶も終わったことだし、仕事の説明を――あれ?」
レダが仕事の説明を新米治癒士たちにしようとすると、診療所の中に初老の男性が入ってきた。
「おうおう、レダ・ディクソンにようやくお会いできるようだのう」
「……おじいちゃん、診療所が開くのはもう少し後なんだけど。あ、でもお怪我をしているなら、なんでも」
「お、おい、レダ! この方は患者ではない!」
「え?」
白い髭と白髪の男性は、温和そうな笑みを浮かべながらも、レダを見極める目をしていた。
「この方は、俺がお世話になったドニー・ウェン先生だ。回復ギルドを立ち上げたひとりであり、現在も変わらぬ回復ギルドの重鎮だ」
「これ、ネクセン。その紹介では、わしが悪徳治癒士だと誤解されてしまうではないか。まあ、元悪徳治癒士ではあるので、否定はできんがな!」
自らを悪徳治癒士と平然と言い放ったドニーに、エンジー、ポール、アメリアたち若き治癒士が警戒を浮かべた。
だが、ドニーはそんな警戒の目など気にすることなく、レダに手を差し伸べ、握手を求めた。
「ご紹介に預かったドニー・ウェンと申す。ネクセンが駆け出しの時に面倒を見てやったのだが、勝手に独立するわ、結婚しても報告しないわでのう。あんまりにも悲しいので、わざわざアムルスまで足を運んだのだよ」
「――お初にお目にかかります、レダ・ディクソンです」
レダは差し出された手を躊躇いなく握り、敬意を込めて挨拶をした。
「そなたの高明は王都にも轟いておる。貴族どもはなんとかそなたを引き抜きたいとお考えのようだが、辺境伯と、陛下がうまいこと釘を刺しているのでしばらくは気ままにアムルスで生活できるであろう」
「そうであれば、嬉しいです」
「回復ギルドを乗っ取り、見事に手中に収めたアマンダ嬢もレダ殿のことを高く買っているようでのう。そなたのために、何かをしたくてたまらんのだろう。だが、そのおかげで、回復ギルドは生まれ変わった。いや、かつての回復ギルドとして蘇った。わしも一度は道を外した愚か者であるが、改めて治癒士として胸を張って生きたいと思えたのだよ。これもそなたのおかげだ。礼を言う」
「俺は家族の力を借りてできることをしただけです」
「うむうむ。そのできることを精一杯やったおかげで、今のそなたがおる。これからもその気持ちを大事にしなさい」
「はい」
もう一度固く手を握りしめ、レダはしっかり返事をした。
「レダ、ドニー先生は、お前がいない間に診療所を手伝ってくださった」
「そうでしたか。お礼を申し上げます」
「よいよい、ネクセンが泣きながら人手が足りないと言っておったのでのう。こんな年寄りの力で良ければ、いつでも貸してやろうとも」
ドニーは、診療所を見渡し、新米治癒士たちの顔をひとり、ひとり、ゆっくり見つめた。
「アマンダ嬢は良い逸材をそなたに預けたようだのう。どれ、レダ殿さえよければ、わしをしばらくこの診療所で正式に働かせてくれぬか? 仮住まいは決めてあるので、衣食住にも困っとらん。蓄えもある。無給で良いので、しばしそなたの働きを見せてほしいのだが?」
ドニーの訴えに、レダはすぐに返事をした。
「もちろんです。ぜひ、お力をお貸しください。俺も、ドニー様から学ばせていただきたく思います」
「ほっほっほ、良き良き。それでは、頼んだぞ、レダ殿」
こうしてドニー・ウェンはしばらくの間、一緒に診療所で働くこととなった。
〜〜あとがき〜〜
ドニーさんがここにいる理由は他にもあります。
お楽しみに!
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