25「ただいま」
「ミナ! お帰りなさい!」
「あ、お母さん!」
診療所に帰ってきたレダたちを出迎えてくれたのは、街の人たちと、診療所を手伝っていたミナの母であり聖女ディアンヌだ。
「私もいるぞ。無事で帰ってきてなによりだ、ルナ」
「ママ!」
ルナの母親である、エルザも出迎えにきてくれていた。
「向こうでは大変だったようね、怪我などしていない?」
「うん! みんなと一緒だったから大丈夫だよ!」
「そう。ならよかったわ」
ディアンヌはミナが元気なことに心から安堵した。
アムルスに来た商人から、ユーヴィンでの出来事を少なからず耳にしていた。
冒険者ギルド長の私利私欲が暴走した話も、ディアンヌとエルザも知っている。
ディアンヌは、まだ幼いミナが人間の汚い部分を見てしまい落ち込んでいないかと心配だったが、アムルスから出立する時と変わらぬ――いや、すこしたくましくなったようにも見えた。
「ルナも怪我などないようで安心したぞ」
「ふふん。私が怪我なんてするわけないじゃないのぉ」
「違いない」
同じ母親であるエルザも、ルナが変わらぬことに笑顔を浮かべていた。
だが、
「――ん? ルナ、お前……少し様子が変わったか?」
「そうかしら? まあ、でも、少しずつ大人になっていくのだから、変化はあるわぁ。もう少し身体にメリハリがほしいのよねぇ」
「いや、そういう意味ではなく……なんだろうか、上手く言葉にできん」
「変なのぉ」
エルザのはっきりしない物言いに、ルナは首を傾げる。
だが、エルザもうまく口にできないようで、それ以上は言わなかった。
「レダ様、アストリット様、ヴァレリー様、ナオミ様、ヒルデ様、お疲れ様でした。本日、ご帰還すると聞いていたので、勝手ながら食事を用意させていただきましたので、ぜひ召し上がってください」
「ありがとうございます、ディアンヌさん」
「いえいえ。このくらいしかできませんもの」
「……診療所も手伝ってくれているのに」
「わたくしはあまり出番はありませんでしたよ。ネクセンさんがずっと頑張っていらっしゃいました。どうぞ、後で労ってあげてください」
「もちろんです」
ネクセンを信用していたからこそ診療所を託したレダだが、ディアンヌの言葉を受けて、きちんと時間を作ってお礼をしたいと思った。
弟子となる予定の新米治癒士たちの紹介もしたい。
「それと、ネクセン様だけではなく、ネクセン様のお師匠様にあたる方が診療所をお手伝いしてくださっていたのですよ」
「え? ネクセンの師匠が来ているんですか?」
「はい。気さくな方で、あっという間に打ち解けています。少々、楽しい方ですが、腕は素晴らしいです」
「ネクセンの師匠が」
「おかげで、フィナ様は冒険者ギルドでの治療に専念できていました」
「お母さんにもお礼を言わないとね」
「ぜひそうなさってあげてください」
ネクセンだけではなく、母にもたくさん世話になってしまった。
ユーヴィンではボンボも活躍してくれた。
母とボンボがアムルスに来たことに驚いた時もあったが、ふたりの助けを借りることができて心から感謝している。
「噂をすれば、フィナ様がいらっしゃいましたよ」
「あ、お母さん」
「レダー! おかえりー! お母さん、寂しかったよー!」
「あはははは、ただいま」
自分よりも外見年齢が幼い母に抱きつかれ、レダは少し気恥ずかしさを覚えながら、帰ってきた挨拶をした。
かつて、当たり前のように母に言っていた「ただいま」を言うことができて、懐かしいと同時に嬉しかった。
〜〜あとがき〜〜
各所へのお礼や、新米治癒士、ネクセンの師匠の前に、まずは休みます。
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