15「魔王と四天王と勇者」③
「そんなことはどーでもいいのだ!」
「……いえ、あの、どうでもよくはないのですが……というか、我が軍勢を雑魚って……反発する種族をまとめて忠誠を誓わせるのに、どれだけの労力がかかったと……」
自慢の魔王軍を「雑魚」扱いされたノワールは、ショックを受けすぎてブツブツなにかを呟いている。
そんな彼の頭を、ぺしんっ、とナオミが叩いた。
だが、ノワールにしてみたら「ぺしんっ」ではなく「どごんっ」くらいの衝撃であったのは間違いない。
「……おえっ。また死ぬかと思った」
「手加減はしてるのだ! それよりも――レダが死者蘇生の魔術が書かれた本を持ってたぞ」
「さすが勇者ナオミ・ダニエルズ。すでにご存知か」
内容が内容だっただけに、ノワールは気を引き締めた。
魔王としても死者蘇生は無視できないように、勇者にも同じなのだろうと考える。
――特に勇者ナオミ・ダニエルズの出自を考えると尚更だ。
「やはりレダが死者蘇生を習得しないように対策をするつもりか?」
「……しないのだ!」
「しないの!?」
「……あれ? なんでそんな話になったのだ?」
「勇者が死者蘇生の話をしたからでしょうが!」
「あー、私としては、死者蘇生がダメとかダメではないの話をするつもりはなかったのだ。ただ、レダもトラブルに愛されているのだ、と話ができるノワールとしたかっただけだぞ!」
「……ああ、そういう意味か。はいはい。先走った私が悪うございました」
ふう、と思い話にならなかったことにノワールは安心した。
いくらレダでも勇者ナオミ・ダニエルズは分が悪い。
一度は戦ったことがあるようだが、彼女が本気ならば間違いなくレダはこの世にいないだろう。
無論、手加減したナオミであってもやりあえる時点で、現役魔王時代のノワールならば種族を超えてスカウトものだ。
「……レダは巻き込まれる体質のようだからな。大切な人を失わないために、蘇生魔術を使えるようになるのもいいと思うのも確かだ」
「はははははは! ノワールは面白いことを言うのだ!」
ナオミは心底おかしそうに笑う。
「――私がいる限り、レダたちが死ぬことはないのだ」
楽しそうに笑っているくせに、目には感情がこもっていない。
この目が怖い。
かつてノワールを殺した時のナオミと同じ目をしている。
「――さすが、勇者――いや、神の使いだけある。おそろしいものだ」
失神こそしなかったが、ノワールは三度失禁しながら、体裁を取り繕ったセリフを言うのだった。
〜〜あとがき〜〜
コミック最新7巻が発売いたしました!
ぜひお読みいただけると嬉しいです! 何卒よろしくお願いいたします!
双葉社がうがうモンスター様HP・アプリにてコミカライズ最新話もお読みいただけますので、よろしくお願いいたします。
次回はレダさんサイドです!
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