1「王家の魔術」①
――王家に伝わる魔術。
それは、王家の人間が代々受け継がれていく魔術である。
例えば、王家の人間にしか使えない独自の魔術である。
例えば、存在が世界を揺るがしかねない魔術である。
例えば、戦場をひっくり返すほどの魔術である。
例えば、多くの命を奪った魔術である。
例えば、戦争を起こさせた魔術である。
例えば、世界に幸せを撒き散らした魔術である。
例えば、世界に不幸を撒き散らした魔術である。
例えば、人の身では許されない禁忌である。
大陸にある大小の国の王家に、それぞれに伝わる魔術がある。
その内容を知るものは少ない。
魔術師の中には、たとえ結果的に死ぬことになろうと、王家の魔術を知ろうとして王宮に忍び込む者もいる。
魔術のために、王族に近づく者もいた。
魔術師にとって、それだけ価値がある魔術が――王家の魔術だ。
その王家の魔術が、写本とはいえレダの手元にある。
いくらレダが、底辺冒険者だったとしても、その価値は理解している。
「……レダ、これは素晴らしいことだ」
「ティーダ様?」
「言っておくが、陛下はアストリット様と結婚されたからと言う理由だけでレダに王家の魔術を授けようとするわけではない。そんなことをすれば、王家の魔術はもっと広がっているだろう」
「ローデンヴァルト伯爵様がおっしゃる通りです。王家の方々と結婚した方は、決して少なくはありません。ですが、親戚となろうと、おいそれと教えてもらえるものではないのです」
ティーダの言葉をアマンダが補足した。
「正直なことを言うと、お預かりしている間は……ずっと緊張していました。万が一、私が王家の魔術を持っていると知られたら何をされるか」
「下手をすると、同行者含めて皆殺しにされて奪われていただろうな」
「そのくらいの覚悟でした! でもですね! 国王陛下は手紙でも届けてくれ、みたいなノリで!」
「……心中察するよ、アマンダ」
「ううっ、ありがとうございます」
よほどストレスだったのだろう。
無事、レダの手に王家の魔術が渡ったことで、アマンダが大きく息を吐く。
「だけど、どうして俺に?」
「それは私にもわからん」
「同じく、私もわかりません」
「ですよね」
ティーダが何かを思い出したように目を動かす。
「そういえば、父から聞いたことがある。あまり良い話ではないが、魔術師だけではなく、王家も魔力は昔と比べると下がったという」
「……王家って結構規格外な魔力を持つ方々が多いはずなんですけどね」
「それでも、だ。魔術が大陸中で全盛期だった頃は、現在規格外と呼ばれる魔術師がゴロゴロしていたそうだ」
「……それは恐ろしい時代、ですね」
「そのような時代の魔術は、すでに使えないと言う。単純な魔力不足だ。同時に、使えたら使えたで危険すぎるらしい。真偽は不明だがな」
「そんな魔術をどうしろって言うんですか……」
「それは私にもわからないよ。ただ、陛下は、レダに何か感じることがあったのだろう。まずは中身を見るといい。無論、私たちに中身を伝えることは禁止だ。いいな?」
「は、はい」
それはそれで、ひとりで抱えると言うことだ。
「また、写本が入っている箱は王家の人間でなければ開けることができないはずだ。アストリット様にお願いするといいだろう。あの方ならば、相談にも乗ってくれよう。その上で、もし、悩むのであれば……とりあえず、写本のことは忘れてしまうといい」
「いいんでしょうか?」
「その内、陛下にご挨拶にいくのだろう? その時に聞けばいいのさ」
「なるほど」
「まあ、アマンダに写本を持たせて届けるくらいだ。世界を揺るがすほどの魔術など入っていないはずだ。あまり気負う必要はないだろうさ」
「そうですね。じゃあ、アストリットに相談してみます」
レダは、ふたりに挨拶をすると、部屋から出てアストリットを探した。
〜〜あとがき〜〜
中身はやばいんですけどね!
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