69「おっさん治癒士ポール・ジョーン」②
ポール・ジョーンから聞かされた半生は決して平凡ではないのだが、本人は自分が平凡であると信じて疑っていない様子だった。
「レダ……ポール殿は、突出した天才とは違うが、できることを当たり前にこつこつ進めることができる秀才な方だ。間違っても、平凡ではない」
「ですよね」
「しかし、奥方が出ていってしまった際に平凡と言ったことで、自分が平凡であると思い込んでいるようだ……と、父から聞いたことがある」
「……なるほど」
秀才であっても、一般的な感性の持ち主であれば、妻に「平凡」と言われて出ていかれてしまえばトラウマになるだろう。
レダも同じようなことを言われれば、気にしてしまう。実際、名ばかりの恋人やパーティーメンバーから吐かれた心無い言葉は最近まで心に刺さっていた。
だが、可愛い娘のミナをはじめ、妻となってくれたルナ、ヴァレリー、アストリット。家族であるナオミ、友人であるティーダ、テックスたちのおかげで今のレダはもう当時と違うのだ。
「叔父上……経歴を見ると、すでに治癒士として活躍をなさっているようですね」
「治癒士として基礎を習った後のことだが、貴族からいくつか仕事があってね。貴族同士だからこそ頼みやすい話もあるのだよ」
「それはわかりますが、ならばお仕事に困らないのではないでしょうか?」
「正直に言うと、困りはしないだろうね。破格の料金で治療依頼をしたいという話もあった」
「ならば」
「しかしね、私は――治癒士になりたいのだよ」
にこり、とポールが微笑んだ。
だが、彼の瞳には決意が宿っている。
「傷ついた人、困っている人がいれば、立場など関係なく自分の最善を尽くしたい。それが治癒士という存在だと思う。だが、貴族のお抱えになってしまうと、自由に治療ができないこともあるだろう。私の理想は――レダ・ディクソン殿のように、分け隔てなく治療ができる治癒士になりたいのだ」
ポールは胸に手を当てた。
「私は父親です。そして、愛しい人もいます。だからこそ、家族に誇ってもらえる治癒士になりたいのです」
そして、レダに向かい深々と頭を下げる。
「レダ・ディクソン殿。私の理想の治癒士殿。あなたの弟子にしてください。そして、家族が、なによりも私自身が誇れる治癒士になりたい。何卒、何卒お願いします」
ポールの訴えをレダはしっかり受け取るのだった。
〜〜あとがき〜〜
コミック最新7巻が13日に発売いたしました!
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