68「おっさん治癒士ポール・ジョーン」①
――ポール・ジョーンの半生を一言で語るなら「平凡」だった。
伯爵家に生まれ、何不自由ない生活をし、自分よりも優れた次男と三男がいるにも関わらず長男だからという理由でジョーン伯爵家の当主になった。
兄弟仲は良好で、弟たちふたりはポールに後継を押し付けてしまったと心苦しいようだ。次男は騎士となり、三男は魔術師として国に支えている。それぞれやりたいことがあったのだ。
そのことをとても羨ましく思った。
親に決められた勉強をし、親に決められた女性と結婚し、子を成した。
一度は、王宮の文官として働いていたが、それも親の命令だった。
そして親が隠居を決め、当主となる。
幸いなことに、伯爵家といっても小さな領地しかもっていない。
平凡な男が平凡に治めるのはなにも問題がなかった。
領民はポールを慕ってくれた。
平凡なポールではあるが、領地で作物が取れなければ税を軽くするなど柔軟な対応を当たり前にできる、良き領主であった。
時間があれば、領民と共に畑を耕すこともした。
それだけでよかったのだが、そんなポールに愛想を尽かしたのか、妻が出て行った。
男がいたのか、それとも単純に愛想を尽かしただけか、わからない。
だが、妻の実家から多くの慰謝料が両親に支払われたと聞いている。
妻は息子を連れて行かなかった。
連れて行かなかったのか、連れていけなかったのか知らないが、まだ幼い息子が残った。
メイドに協力してもらいながら、息子を育てた。
新しい結婚の話もあったが、断った。
息子は自分に似ておらず、利発な子であり、よき跡取りになるだろうと期待した。
年若いメイドは息子の姉のように接してくれて、反抗期もあったが、無事に息子は育ってくれた。
自分に似ることなく、優れた青年となり、安心した束の間――事故に遭ってしまった。
幸い、一命は取り留めたが、治癒士の腕があまりよくなかったのか、完治とまではいかなかった。メイドは甲斐甲斐しく世話を焼いてくれて、おかげで無事に日常生活に戻ることができた。
その頃には息子もすっかり当主代行として立派に領地を仕切るようになっていて、父親としての役目を終えたと実感した。
そんな時だった。ふと、内側に熱いなにかを感じたのだ。
何かしらの病気だろうかと悩み、医者に行くと、魔力があると言われた。それも一般的な魔術師を上回る魔法量だと言う。
さらに驚くことに、治癒士の適性があるという。
困ったのは言うまでもない。
魔術師ということだけで引く手数多であるのに、治癒士となればいろいろ面倒になる。
そこでポールが考えたのは、息子にすべてを譲り、治癒士として第二の人生を送ろうと決めた。
長年連れ添ってくれたメイドは、まだ二十代半ばというのに着いてきてくれるという。尽くしてくれるのは嬉しいが、彼女には彼女の人生を送ってほしいと思ったのだ。
すると、メイドはポールをずっと慕っていると告白したのだ。
年齢は離れているが、ポールも彼女のことは憎からず思っていた。なので結婚を申し込み、治癒士として独り立ちできるまで、二人三脚の日々を送り始めた。
「以上が、平凡な私の半生です。こんな私ですが、妻と一緒に幸せになるため、多くの人を救うために治癒士として一人前になりたいのです。レダ・ディクソン殿! どうかお弟子にしていただきたい!」
「……この方のどこが平凡なんですか!?」
〜〜あとがき〜〜
開花したおっさんはだいたいチート!
コミック最新7巻が13日に発売いたしました!
ぜひお読みいただけると嬉しいです! 何卒よろしくお願いいたします!
双葉社がうがうモンスター様HP・アプリにてコミカライズ最新話もお読みいただけますので、よろしくお願いいたします。
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