67「四人目は若手?」





 レダとティーダは二度目の小休憩を取っていた。

 ずっと話をしていれば疲れるし、喉も乾く。

 十分ほど紅茶を飲んでゆっくりしたかった。


「……それにしても、レダの話題は王都にも広がっているようだな」

「そうみたいですね。なんだか不思議です。一年前は王都で未来が真っ暗だったんですけどね」

「人の人生は難しいな。だが、レダがアムルスに来なければ、私たちは出会えなかった。ここまでの道中でミナと出会うこともなかっただろうし、ルナたちにも会うことはなかっただろう」

「……俺にとってアムルスに来るという選択は、人生で一番良い選択だったと思います。あの日、ミナに出会ったことで俺の人生が変わりました」

「ミナはレダにとって幸運の女神だな」

「はい。ミナは愛娘であり、恩人です」


 レダはティーダと笑い合った。

 王都にいた時、レダは絶望していた。

 なにをしてもうまくいかず、心も荒んでいた。


 だが、アムルスに行くことを決め、道中でミナと知り合った。

 そこから目の回るほどいろいろなことが起きた。


 そして、今、ここにいる。

 きっとこれからも多くのことが起きるだろう。

 楽しみであるし、きっと大変だろうなと思う。


 レダがアムルスで大きく変わったように、若き治癒士にもアムルスとユーヴィンで送る日々で大きく成長してほしいと願っている。


「さて、そろそろ休憩を終えて次の治癒士と面談することにしよう」

「そうですね。あと二人か……日が変わる前に話がつくといいですね」


 レダは同じく小休憩していた部屋の見張りの冒険者に声をかけて、次の若き治癒士を読んでもらった。

 しばらくして、部屋の中にノックと共にお辞儀をして入ってきたのは、五十歳ほどの男性だった。


「え?」


 レダとティーダよりも二回りほど年上の男性の登場に、驚いてしまう。

 だが、それ以上にレダが驚いたのは、


「――叔父上!?」


『新米治癒士』がティーダの叔父であることだった。


「久しいね、ティーダ。いや、ティーダ殿」

「ま、待ってください、叔父上。なにがどうして、ここに?」

「何って、素晴らしい治癒士であるレダ・ディクソン殿の弟子になるため馳せ参じたのだよ」

「いえ、ですから、ええっ? あの、叔父上はそもそも治癒士としての才覚があったのですか?」

「いいや、なかった」

「ですよね。あれば、とっくに治癒士になっていたはずですものね」

「私も若い頃に才能が開花してくれたらよかったのだけどねぇ」

「ま、まさか」


 ティーダの叔父は、にこり、と微笑み頷いた。


「そう。私は、半年前に死にかけてね。そのおかげか、魔力に目覚め治癒士としての才能が開花してしまった。ならば、治癒士ではじめる第二の人生があってもいいじゃないと思ってね。息子に家のことは任せて、レダ・ディクソン殿に弟子入りしにきたのだよ」

「な、なんということですか」


 唖然としているティーダはもちろん、レダも絶句している。

 九死に一生を得て力に目覚めることはあるが、力に目覚めたからと言ってこの行動力はすごいと思った。


「おっと、自己紹介がまだで失礼しました。私は、ポール・ジョーン。かつてはジョーン伯爵家の当主だったが、今はただのポールだ。よろしくお願いしますね、レダ・ディクソン殿」






 〜〜あとがき〜〜

 第二のおっさん治癒士現る!?


 コミック最新7巻が13日に発売いたしました!

 ぜひお読みいただけると嬉しいです! 何卒よろしくお願いいたします!

 双葉社がうがうモンスター様HP・アプリにてコミカライズ最新話もお読みいただけますので、よろしくお願いいたします。


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