66「可愛い不満」
「ぶぅー」
「ミナったら何をふくれているのかしらぁ?」
ルナはふくれっ面をしているミナの頬っぺたを突いた。
「膨れてないもん!」
「膨れているじゃなぃ」
本人は否定しているが、誰だどう見ても膨れている。
「どうしっちゃったの、ミナったら。さっきまでいい子だったのにぃ」
「……もん」
「え?」
小さな声だったので聞き逃してしまったミナの呟きを聞き逃してしまい、ベッドの上で膨れている妹の隣りにルナが座る。
「どうしたの? もう一度言って?」
「お父さんの一番弟子はわたしだもん!」
「あら……そういうことだったのねぇ」
ルナの姉心がきゅんきゅんした。
いい子を貫いてきたミナが珍しく、自分が一番だと言う。
姉にとってミナのこんな変化が嬉しくある。
「お父さんから治癒を教わったのもミナが最初だもん!」
「もうっ、ミナったらかーわーいーいー!」
「わぷっ、ちょっと、お姉ちゃん?」
「いいのいいの、もっと嫉妬なさい嫉妬なさい。ミナだって言いたいことは言っていいんだし、たまには文句言ったっていいのよ。大体アマンダのやつも、恩着せがましいのよねぇ。パパに借りがあるのはあんたの方なのに、弟子だかなんだかわからない奴を押し付けて。そこは、領主に押し付ければいいじゃない。パパったらお人好しなんだから……おえぇ」
「お姉ちゃん? 大丈夫? あと、私はそこまで思ってないからね?」
ミナの話を聞いていたはずのルナが愚痴を言い出してしまったのだが、ミナはそこまで思っていないと否定する。
ミナとしてはあくまでも、レダ・ディクソンの一番弟子はミナ・ディクソンであることをちゃんとしておきたいだけだ。
大好きなレダのもとで治癒を習い、診療所も手伝ってきた自負のあるミナは、いくら大人たちとはいえ、一番弟子の座は譲れなかった。
「わたしのことはいいんだけど、お姉ちゃん大丈夫なの? ここ数日、なんかずっとおえおえ言ってる気がするよ?」
「そこまでおえおえ行っていないわ……あれ? 言っているわね」
「もしかしてどこか具合が悪いの?」
「いいえ、元気よ。ユーヴィンの水が合わないのかしら、あ、でも泥水でも余裕で啜れる私がいまさら水が違っただけでどうこうなるとはおもわいないんだけどぉ」
「……お姉ちゃん、それは自慢にならないよぉ」
「あはははは、そうね。でも、本当に元気なのよ? だって、最近は食欲も増しているし、太らないように我慢はしているけどぉ」
「うーん。なんか変かなぁ?」
膨れていた顔をもとに戻したミナは、姉の変化に首を傾げるのだ。
レダに似て心優しいミナは、自分の抱いていた不満など消し去り、ただただ姉の心配をしたのだ。
そして、翌朝。弟子の存在を知り、再び頬を膨らますこととなる。
〜〜あとがき〜〜
ミナちゃんだってほっぺを膨らますことはありますとも!
コミック最新7巻が13日に発売いたしました!
ぜひお読みいただけると嬉しいです! 何卒よろしくお願いいたします!
双葉社がうがうモンスター様HP・アプリにてコミカライズ最新話もお読みいただけますので、よろしくお願いいたします。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます