62「三人目は個性的」①





 何度もお辞儀をして部屋から出ていったシュシュリーを見送ったレダとティーダは顔を合わせた。


「……レダ? 彼女のことを覚えているかな?」

「なんとなく……覚えているようないないような」


 ティーダの問いかけにレダは困った顔をした。


「数年前は……その、まだ底辺冒険者になる前だったので、その、強気だったといいますか、なんというか、はい」

「暴漢に襲われている少女を助けるのはレダらしくて好ましいと思っている。そのことに関しては恥ずべきではないし、胸を張って誇るべきだ」

「……ありがとうございます」


 ティーダから肩を叩かれたレダが、気恥ずかしそうにする。


(シュシュリーの姉は……確か、何度か結婚の申し出を受けているが、慕っている人がいるからと断っていた気がしたんだが……まさか、レダのことじゃないだろうな?)


 シュシュリーの姉は、お淑やかで気立の良い女性だ。

 甘やかされて育った貴族の子女と違い、家事もできるし、料理も得意だ。

 貴族の令嬢にはありえない話だが、針仕事をしている。また、彼女の刺繍したハンカチは王都の女性たちに人気である。ティーダの妻と娘たちも、彼女のハンカチを持っている。

 最近では、そんな彼女に支援をしてもっと彼女の職場を大きくすることで、ひとつのブランドとすることを提案している貴族や商人もいるようだが、彼女は多くを望んでいないらしい。

 そんなシュシュリーの姉がもしレダを慕っているとなると、それはそれで大変なことになりそうな予感がする。


(ルナ、ヴァレリー、アストリット様、勇者ナオミ殿、ヒルデ殿にも報告をしておかなければならない。私の不手際で、レダに女性が近づこうものなら……どのようなお仕置きをされるか判ったものではないのだ!)


 ごほん、と咳払いをしたティーダは気を引き締め直す。


「彼女の姉に関してはまた後日にしよう。それよりも、シュシュリーはどうだったかな?」

「良い子だと思います。アムルスやユーヴィン、そしていずれ他の街にも診療所を立てていくことをティーダ様がお考えなのは知っています。治癒士としての腕も大切ですが、彼女のように真摯に向き合う姿勢を持つ子の存在もとても大切だと思っています」

「ふむ」

「今人的には、彼女を受け入れてもいいと思いました」

「レダがそういうのなら、私から言うことはない。家的にも問題はなく、彼女個人も問題はないからな。治癒士の腕も、回復ギルド長直々の推薦なので心配はないだろう」


 こうしてシュシュリーもレダの弟子になる方向で話を進めることにした。


「では、次の治癒士を呼んでくれ」


 ティーダが次を呼ぶと、三人目が現れた。


「――お初にお目にかかる。俺の名はエンジュエル。かつて堕天使だった過去をもつが、人々を救うことでかつての贖罪をしたいと思っている! まだ人の肉体に慣れず未熟なところが目立つが、名高いレダ・ディクソン殿の元で弟子として働くことで、俺に秘められた才能の開花と多くの人々を救いたい! 俺を弟子にして損はさせないぜ!」


 黒髪の長髪に、黒づくめの青年の言動にレダとディーだが目を丸くした。


(ま、また濃い子がきたなぁ)






 〜〜あとがき〜〜

 一応、エンジェル氏は転生者とかではありません。


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