61「過去の出来事」②





 その後、迎えにきたメイドと騎士がシュシュリーと姉が血で赤く染まっていることに驚いたが、傷はなかった。

 それこそ、数日前に負った治りかけの切り傷や、昔、足を負った時の後遺症なのか足への違和感も全て、だ。

 シュシュリーだけではなく、姉も顔に負った斬り傷はもちろん、古傷まですべて消えてしまったことに驚いていた。


 慌てて屋敷に帰ったシュシュリーと姉は、両親に起きたことを話した。

 やや興奮気味に話をするシュシュリーと、顔を赤くして説明する姉の言葉を信じた両親は、冒険者に礼を言いたいとレダ・ディクソンを探した。

 しかし、彼が回復ギルドに所属していることが確認できなかった。

 父は、レダが治療費を求めず善意で治療をしてくれたことから、回復ギルドに所属していない「まとも」な治癒士であると判断したようだ。

 結局、レダは見つからず、すっかり姉は落ち込んでしまった。


 対して、シュシュリーはレダのあの姿が忘れられなかった。

 恋ではない。

 強い憧れだった。

 傷ついた姉に対し、優しくも厳しく、そしてどんな治癒士よりも素晴らしい治癒を施す姿は、神の使いのようだと思えてしまうほどだった。


 そんなシュシュリーに、転機が訪れる。

 なんと魔術師の才能と、治癒士の資質が見つかったのだ。

 ただし、治癒士としての資質は決して大きいわけではなく、大成できるわけではないと言われていた。

 それでも構わなかった。


 シュシュリーの才能を伸ばしてあげたいと、父は魔術師の家庭教師を雇い、善良な治癒士を招き、勉強の場を与えてくれた。

 レダのようになりたいという目標を持つシュシュリーは、周囲が心配するほど努力し続けた。


 そんな折、レダの名前が王都にも伝わるようになり、回復ギルドの大改革が始まった。

 見習い治癒士の学びの場ができ、シュシュリーは同じ志を持ちライバルである友人たちと知り合い切磋琢磨してきた。




 ――そして、憧れのレダの弟子になるべくここにいる。




「レダ・ディクソン様! あなたを目指してずっと頑張ってきました! 私の治癒士としての実力を認めていただけたのであれば、弟子にしてください! よろしくお願いします!」







 〜〜あとがき〜〜

 回想続きました。シュシュリーさんはとりあえず次回で終わりです。次の方へバトンタッチ。


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