54「アマンダの提案」⑤





 そこからの行動はスムーズだった。

 アマンダがすでに持っていた治癒士たちの書類をティーダが受け取り、経歴に問題ないかチェックした。

 アマンダの紹介なので心配はないのだろうが、なにもチェックしないというわけにはいかないので念入りに行う。


「素晴らしい経歴の持ち主たちだね。王都の学校を上位の成績で卒業後、回復ギルドで下積みをしながら治癒士として学んだようだね。貴族のご子息、御息女もいるのか」

「はい。といっても、彼らは貴族としてではなく、あくまでも治癒士として扱って欲しいと希望しています」

「若いのに立派だな。将来に期待できる」


 レダも書類を見せてもらったが、若き治癒士たちは底辺冒険者だったレダでも知っている名のある貴族や、商家、魔術師の家の出身だった。


「本人たちは家の跡継ぎではないことから、レダさんの弟子として師事できるのであれば回復ギルドからの派遣ではなく、回復ギルドからの紹介ということでローデンヴァルト伯爵家に雇われることも構わないとおっしゃっています」

「――っ、それはつまり、ユーヴィンやアムルスに永住してくれると!?」

「はい。ただ、レダさんが他の土地に移るのであればついていきたいという前提がありますが」


 ティーダが、ちらり、とレダを見た。

 レダが慌てる。


「俺はアムルスから出るつもりはありませんよ。お世話になった皆さん見捨てて他の場所なんていけません」

「……感謝する、レダ」

「では、治癒士たちは回復ギルドからローデンヴァルト辺境伯への紹介という形にさせていただきます。ただ、回復ギルド側として助言させていただくと、治癒士は喉から手が出るほど欲するでしょうが、直接人となりを確認してから正式に話を進めてきましょう。それが、お互いのためだと思います」

「そうだな。すまない。思いがけない話だったので、急いてしまったようだ」


 ふう、と大きく息を吐くティーダに、レダは苦笑した。

 気持ちはわかるし、ユーヴィンの現状を考えると治癒士が増えるのはいいことだ。

 治癒士として活動を始めて知ったのだが、貴族と貴族は治癒士の取り合いをしている。

 今までレダにも、秘密裏に貴族の使者から接触がなかったわけではない。目玉が飛び出そうな金銭と、愛人と奴隷を用意するなどと言われたが、現状を幸せであると断言できるほど満たされているレダは靡くことがなかった。


「治癒士たちはどうしている?」

「当初は宿で休む予定でしたが、レダさんが少し前まで働いていることを知ったこともあって、自分達も力になりたいと炊き出しなどをはじめ、お屋敷のお手伝いをしています」

「……勤勉な者たちだね。好感が持てる。だが、気持ちは嬉しいが、身体は資本だ。彼らにもしっかり休んでもらいたい。そして、明日、ひとりひとり面談をしたい。構わないかな?」

「もちろんです。できれば、レダさんも同席をお願いします」

「無論だ」

「では、明日、こちらのお屋敷に伺いますのでよろしくお願いします」


 レダはティーダと共に、治癒士たちと面談することとなった。







 〜〜あとがき〜〜

 次回から新キャラが出てきます!


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