55「若き治癒士ルルウッド」①
「失礼します。回復ギルドに所属する治癒士――ルルウッドと申します」
アマンダと再会を果たした日の夜。
さっそくティーダとレダが治癒士たちの面談をすることとなった。
すでに、この日の仕事は終わっている。
冒険者たちもまずは身体を休めることを専念しているので、治癒士の出番はもうないだろう。
炊き出しなども、手の空いた物たちが積極的に手伝ってくれたので、ディクソン一家とアムルスから来た冒険者たちもようやくひと段落となった。
明日にはアムルスに冒険者たちが戻って食料や生活品を扱う商人を護衛してユーヴィンに来るという役目があるので、なかなか忙しくなりそうだ。
そこで、今日のうちに若き治癒士たちと面談をしておきたいと思っていた。
「ティーダ・アムルス・ローデンヴァルトだ。……君とは何度か会ったことがあるね」
「お久しぶりです、ローデンヴァルト辺境伯様。私のことは、ただ治癒士のルルウッドとして扱ってくださることを望みます。両親、兄弟からも許可はもらっています」
ルルウッドと名乗った青年は、十八歳ほどの若き治癒士だった。
顎あたりまで伸ばした亜麻色の髪は、癖ひとつない手入れが行き届いている。
身につけている衣服は回復ギルドから支給されたものであるが、彼の物腰は教育を受けている貴族のそれだった。
「……君がそう言うのであれば、そうしよう。では、ルルウッド。まずは、心からの感謝を。君をはじめ、君たち若き治癒士がユーヴィンに来てくれたおかげで街の未来が明るくなった」
「もったいないお言葉です。私もユーヴィンで良い経験をさせていただきました。できることなら、このまま辺境伯様のもとで働きたいと思っています」
「ふふふ。私ではなく、レダのもとでだろう?」
「……はい」
ルルウッドは、待っていましたとばかりにティーダから視線を外すと、レダに向けて膝を突きお辞儀をした。
「レダ・ディクソン殿。あなたのご活躍は王都にも轟いています。このルルウッド。ディクソン殿のもとで勉強させていただきたく、馳せ参じました。どうかお弟子にしてください」
「……えっと、レダ・ディクソンです。そう堅苦しい挨拶は抜きにして、お立ちください」
「――はっ」
レダは焦った。ティーダに対しては貴族のお辞儀をしただけのルルウッドが、レダに対しては膝をついて挨拶をしたのだ。まるでレダのほうが上だと言わんばかりの態度だ。
ティーダは苦笑しているので、問題ないようだが、貴族とわかる青年に膝をつかれるなど初めての経験なので戸惑うしかない。
なんとか声を絞り出すと、ルルウッドは声をかけてもらったことを喜びはにかむと、立ち上がった。
「レダ・ディクソン殿、このルルウッド――あなたの弟子にしていただけるのであれば、あなたとローデンヴァルト辺境伯家に心から忠誠を誓いましょう」
〜〜あとがき〜〜
まずは若手治癒士のリーダー格であるルルウッド殿です。
実は貴族の出身なのです。彼の背景はまた後日。
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