50「アマンダの提案」①




「それで、アマンダさんはどうしてユーヴィンへ?」


 レダは本題に入った。

 彼女が元気そうで安心したが、ここに来た理由も気になるのだ。

 アマンダの立場は、今や回復ギルド長だ。フットワーク軽く、辺境の街まで来て良い身分ではないはずだ。


「――その、実を言うと、以前からユーヴィンの惨状は噂ではあるのですが聞いていました」

「なんだって?」

「ベニーはとにかく領主であるティーダ様に自分の所業がバレることを警戒していましたし、冒険者に甘い汁を吸わせ、弱みを握るなどして口止めもしていましたが……王都という離れた場所ではベニーの力も働きません」

「だったら」

「もちろん、冒険者ギルドや王宮も疑いました。しかし、領主の土地をギルド長が支配するなどということがありえるのか、という話も同時に出てしまったのです。さらに言うと、ユーヴィンに出入りする商人や冒険者に聞き取り調査をしたのですが……」

「ベニーと繋がっている人ばかりだったと」

「残念です。それでも、その噂が出回ったのは三ヶ月ほどまえですので、正直なことを言ってしまいますと……ユーヴィンの惨状が三ヶ月前になんとかできたとは思えません」

「そう、ですね。せめて一年前とかならまた話は変わったのかもしれませんが」


 レダとアマンダは暗い顔をする。

 ダンジョン発見に熱を上げてしまい、周囲が見えなくなっていたベニーではあったが、肝心なところではしっかりしていたようだ。


「冒険者ギルドはもちろんですが、王宮もとてもお怒りです。商人たちは、そのあまり言いたくないのですが、報いを受けるでしょう」

「……しかたがないことだ、とわりきりましょう。正直、この街の惨状を見てしまうと、いくら甘いと言われる俺でも、思うことはあります」

「お気持ちはわかります」


 アマンダは目を瞑った。

 そして、目を開けると、彼女は力強い言葉を発した。


「私もツテを使ってユーヴィンを探らせていました。この街には治癒士がいませんので。そんな時に、この騒動です。レダさんご一家も関わっていると知り、居ても立ってもいられず来てしまいました」

「ご心配くださりありがとうございます」

「いいえ、そんな。そして、私から提案と言いますか、回復ギルド長としてレダさんやティーダ様に――この街への治癒士の派遣を希望します」


 アマンダの申し出に、レダは大きく目を見開いた。





 〜〜あとがき〜〜

 アマンダさんはレダへの恩義もあり、また個人の使命感、正義感から動いています。


 コミック1巻から6巻好評発売中ですので、よろしくお願いいたします!


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