46「ベニーの最後」①





「おい、頼む! なあ、テックス! 領主様! 俺を助けてくれ! なんでもする! 心を入れ替えるから! 無償で働く、必ず役に立つから、頼む! 王都にだけは送らないでくれ!」


 ドラゴンの肉を食べ終えたユーヴィンの人々は、手枷足枷を付けられて王都へ連行される冒険者ギルド長ベニーを見送っていた。

 ベニーの他にも、ユーヴィンでやりたい放題だった商人も同じく、枷を嵌められて連行されている。彼らも同じく、「無実だ」「金を払うから」と耳障りな声をあげているが、誰ひとりとして相手にする者はいない。


「頼む、頼む! 俺が王都でどんな目に遭うかわかっているだろ? 苦しめられてから死ぬなら、せめて殺してくれ! なあ、領主様! せめて、せめてダンジョンだけでも見せてくれよ! 俺がずっと探していたんだぞ! 俺にはその権利がある!」


 腕を組み、見送っているティーダは涙で顔をぐちゃぐちゃにしながら必死に叫び続けるベニーの言葉にぴくりとも反応しない。


「情報なら全部吐く! お願いだ、領主様! 俺を生かしておいた方が、いい! そうだろ! 俺がどれだけユーヴィンのために身を粉にし続けたか、知らないからこんな態度が取れるんだ!」


 ひとりの少年が、怒りに身を震わせて石を拾って投げようとしたが、近くにいた大人に止められている。

 悔しさに顔を滲ませる少年に、大人は首を横に振った。

 気持ちはわかるが、ベニーになにをしても変わらないし、反省もしないだろうとわかっているのだ。


「誰か! 見てないで助けてくれ! 俺が、この街のためにどれだけのことをしたと思っているんだ! 冒険者みたいなクズが集まった街を、俺が回さないで誰が回すっていうんだ! この街を放っておいた領主様か? 俺にビビって隠れていた貴族様か? 違うだろう!」


 叫びながらベニーはなんとか逃げようとするが、殺気立つ冒険者たちが剣の柄に手をかけているのを見て、おとなしくなる。

 周りを囲む冒険者たちは、ベニーが逃げれば、これ幸いと殺すだろう。


「助けて、助けてくれ……神様」


 最後には神に祈りながら泣きじゃくり始めるが、それでも誰も同情などしない。 

 結局、ベニーは誰からも言葉をかけられることなく、王都へ向かう馬車に乗せられたのだった。






 〜〜あとがき〜〜

最新コミック6巻が発売されております!

ぜひお読み頂けますと幸いです!

よろしくお願い致します!


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