40「ダンジョンのボス?」②
「――こ、これは、かつて私に喧嘩を売ってきたのでボコボコにしてやったが、殺せなかったからダンジョンの奥深くにぶち込んだ結果、ダンジョンの主を気取り出したドラゴンじゃないか!」
「説明どうもありあがとう! つまりどれくらいすごいの!?」
「魔王時代の私よりもちょっと弱いくらい!」
「……うわぁ」
首と胴体が綺麗に両断されて絶命しているドラゴンは、魔王よりも少し弱いくらい、つまり世界で上から数えたほうが早い強者である。
そんなドラゴンが亡骸となって雑の転がされている光景は、凄まじいものがあった。
レダも冒険者であるので、ドラゴンを見たことがないわけではない。
数ヶ月前には、エルフたちと共に里を襲撃したドラゴンと戦ったこともある。
しかし、今まで見たどのドラゴンよりも巨体であり、亡骸になってもなお放出する魔力と威圧感に、足が震えてしまう。
他の冒険者たちもレダと同じようで、尻餅をついている者もいれば、失禁している者もいる。だが、責めることは酷というものだ。
「ダンジョンの奥まで行ったら、ふふふ……人間か、幾年ぶりだろうか我のもとにたどり着いた人間を見たのは、いいだろう、ならば――とか話が長かったのでぶっ殺しちゃったのだ!」
満面の笑みでそんなことを言うナオミに、一同は戦慄する。
人語を操るドラゴンがどれだけいるだろうか。
見た限り、ナオミは傷らしい傷を負っていない。血が衣服についているが、おそらく返り血だろう。
さすが勇者と誉めるべきか、あまり危険なことをしないでほしいと注意すべきか、レダは悩んだが、ナオミが誉めて欲しいとばかりに期待した目でみてくるので、
「よしよし! さすが勇者ナオミだ! 強い! 我が家の勇者様! アムルス期待の星!」
「へへーん、なのだ!」
思い切り誉めることにした。
すると、ナオミは嬉しそうに身を捩る。
「――私は決めた。くそチート勇者を手懐けるレダとその家族たちに寄生しよう。ずーっと離れない。そうすれば、私の命は守られる! 決めた、もう元魔王とかどうでもいい! 僕はディクソンさんちの可愛い子猫だ!」
ナオミに倒された元魔王は、思うことがあったのか飼い猫宣言をしていた。
ひとしきり頭を撫でられ満足した直美は、聖剣を抜いてドラゴンに向かう。
「ナオミ?」
なにをするのか、と問うレダに、彼女はにっこり笑った。
「ドラゴンは鮮度が落ちる前に捌いておくほうが美味しいのだ。街に戻ったら、みんなで食べるのだ。ドラゴンの肉は美味しくて、身体にいいのだぞ!」
「待って待って待って待って待って待って待って! 食べちゃだめー!」
食べる気満々のナオミに、今まで呆然とことの成り行きを眺めていたティーダが飛びかかった。
==あとがき==
最新コミック6巻が発売されております!
ぜひお読み頂けますと幸いです!
よろしくお願い致します!
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