39「ダンジョンのボス?」①
「ナオミがダンジョンに潜って二時間。轟音と地響きがしているのに、俺たちはのんびりお茶を飲んでいていいのかな?」
ダンジョンの近くで簡易的な陣営を組んだ一同は、お茶を飲んで小休憩をしていた。
もちろん、気を抜いてはおらず、見張りと交代制だ。
ただし、ティーダやレダ、ノワールなどの非戦闘員は見張りはせず、冒険者たちに任せる形となっている。
「心配するな、レダ。勇者ナオミは、長年魔王として君臨していた私をさくっと殺したのだぞ。このダンジョンの中のモンスターや、私が放り込んだ魔導人形など彼女にとってはじゃれつく子猫だ」
「その割にはどったんばったんしているんだけど」
「……それはどちらかと言うと、ダンジョンの中の脅威ではなく、勇者ナオミがちゃんと加減していないからだろう」
「心配だなぁ」
「私はダンジョンが崩壊しないか心配だ」
ノワールの呟きに、ティーダがギョッとした。
多くの冒険者が犠牲になりながら、ようやく見つけたダンジョンが、身内によって破壊されてしまうのは困る。
ティーダがダラダラと嫌な汗を流す。
「冗談だ、ティーダ殿。このダンジョンは、私の失敗作を放り込めるほど頑丈だ。いくら由者ナオミでも、ダンジョンを破壊するなどできやしない……と、いいなぁ」
「ノワール殿!? 最後まで自信を持って言い切ってはくれませんんか!?」
「魔王一撃で殺せる勇者だぞ! 絶対はない!」
子猫と喧嘩をする領主という妙な構図が出来上がってしまったのを苦笑しながら眺めていたレダだが、彼としてはいくら強くてもナオミは女の子だ、と心配していた。
勇者で強くとも、怪我をすれば痛いし、傷も残る。
女の子だからと決めつけるわけではないが、個人的に傷ついてほしくない。
レダはナオミを案じて、ティーダとノワールはダンジョンが崩壊しないことを案じながらしばらく待っていると、
「楽しかったのだー!」
満面の笑みでナオミが戻ってきた。
「ナオミ、おかえり!」
「ただいまなのだー!」
レダが駆け寄ると、ナオミが嬉しそうに抱きついてきた。
「――主よ。ダンジョンが壊れなかったことに感謝します!」
「神なんて糞食らえだが、今だけは感謝しよう」
ティーダとノワールが天に向かって祈っているのを見て、レダは苦笑し、ナオミは首を傾げた。
「そうだ、ナオミ。怪我はない? 治療は?」
「レダは大袈裟なのだ。このくらいたいしたことないない! 最下層のドラゴンは鱗が固かったので一撃では倒せず、つい八割も力を使ってしまったのだ」
「……今、ドラゴンって」
「ちゃーんと持ってきたのだ! 見るのだ!」
アイテムボックスに手を突っ込んだナオミが、自慢するように腕を引き抜くと、
「ぎゃぁあああああああああああああああああああああ!?」
ざっくり成人男性十人分くらいありそうな巨体を持つ緑色の鱗を持つドラゴンの亡骸が、ダンジョンの前に現れ、ティーダや冒険者が悲鳴をあげたのだった。
==あとがき==
最新コミック6巻が発売されております!
ぜひお読み頂けますと幸いです!
よろしくお願い致します!
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