38「ダンジョン発見」②
ダンジョンの中から飛び出してきたのは、レダが見たこともない存在だった。
レダの二倍はありそうな体格の人形のような、人型のモンスターだ。
しかし、そのモンスターに意志を感じられなかった。
目に入ったから襲いかかってくる。そんな印象を覚えた。
「……よりによって人造モンスターが最初に飛び出してくるとは」
「一番槍はもらったのだぁあああああああああああああああ!」
誰よりも早く飛び出したのは、勇者ナオミだった。彼女は大剣を構えると――次の瞬間、人型モンスターは真っ二つに両断されていた。
「え? 今、なにも見えなかったんだけど」
「ああ……蘇るトラウマ」
レダはナオミがなにをしたのかわからず、ノワールは魔王時代に彼女に倒された瞬間をフラッシュバックさせて失禁していた。
「っしゃ! 余裕なのだ! このくらい雑魚雑魚なのだ! あ、でも、お前らには強敵だから油断しちゃだめだぞ?」
「押忍!」
「わかりやした!」
ナオミは余裕と言ったものの、あくまでも勇者である彼女視点であるのだと、背後にいる冒険者に向かって言う。
冒険者たちが、素直に返事をすると、「うむ!」と満足そうな顔をして、ダンジョンの中に突撃してしまった。
「……あれでは護衛の意味がない気がするのだがね」
レダにお股を拭いてもらっているノワールが嘆息した。
だが、こちらには冒険者たちと、なによりもボンボがいる。
ノワールがナオミを止めなかったことから、元魔王の彼でも対処できると判断したようだ。
「どうしますか、ティーダ様。ナオミを追いかけますか?」
「いや、私たちの目的はダンジョンの存在を確認することだ。中に突入するには準備が足りていない。それに、ダンジョン内のことは冒険者諸君に任せるとしよう。ノワール殿、危険が多いのはダンジョンゆえ承知だが、人の身でなんとかなる範囲かな?」
「勇者ナオミが私の廃棄物を処理してくれれば、一般的なダンジョンと変わらないだろう。しかし、私も元とはいえ魔王だ。私にとってこのダンジョンは大した難易度ではないが、君たち人間には違うだろうね」
「そうですか」
ダンジョンに危険がつきものであることは誰もが承知していることだ。
だが、ダンジョンの難易度を設定することはしなければならない。
領主自らがダンジョンに挑むことはないが、信頼できる人間を送り込んで、難易度を把握することも重要だ。
とはいえ、一流の冒険者を送り込んでも、短期間でダンジョンを攻略できるものではない。
ダンジョンとは地下迷宮なので、一説によるとすべてのダンジョンが繋がっていると言う説がある。
大陸各地にいくつか点々としているダンジョンだが、最下部まで攻略されたダンジョンは少ない。また最下部にたどり着いたイコールダンジョン攻略でもないのだ。
「老婆心ながら助言させてもらうと、ダンジョンの周りに街を作ることはしないほうがいい。ユーヴィンの街を拡張し、ダンジョンの近くまで広げることをお勧めする」
「ご助言どうもありがとうございます。私も同感です。未知数のダンジョンの近くに人を住まわせることはできません」
「捕まえたギルド長のことは、冒険者ギルドの本部、王宮にも伝えるのだろう?」
「もちろんです」
「ならば、勝手に優れた冒険者が、新たなダンジョンを求めてユーヴィンに集うだろう。いつの時代でも、冒険者とはそんなものだ。そして、ユーヴィンが、ローデンヴァルト伯爵領が潤うだろう」
ノワールの言葉に、ティーダは微笑んだ。
責任を伴うが、ダンジョンの存在は領地の発展を多いの手助けするだろう。
「さて、勇者ナオミが飽きるまで、私たち周辺のモンスターを一掃し、拠点を作ろう。このままでは休憩もできない」
ノワールの提案に、レダたちは頷き行動を始めた。
〜〜あとがき〜〜
最新コミック6巻が14日発売となりました!
コミカライズ最新話も本日公開です!
そろってお楽しみいただけると嬉しいです!
よろしくお願い致します!
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