33「レダとローゼス」①
「レダ――心から礼を言う。死ぬことだけを救いだと思っていた私を癒してくれただけではなく、五体満足に戻してくれたこと……どれだけの言葉を尽くしても感謝を表せない。ありがとう」
風呂から上がり、食事をとったローゼスは、すべての怪我人を治療し終えたレダに近づき、深々と頭を下げた。
「ローゼス。顔を上げてほしい。俺たちは友人だ。友人が困っているのなら、どんなことでもするさ。それに、患者に最善を尽くすのが治癒士だからね」
レダはローゼスに懐かしそうに目を細めて手を差し出した。
「久しぶりだね、ローゼス。いつか君と立派に冒険者になった姿を見せたいと思って頑張ってきたんだ。挫折もあったし、苦労もあったけど、こうして再会できて嬉しいよ」
ローゼスは差し出された手を強く握りしめた。
「私もだ。あの日、迷い込んだ村でレダと出会い、その秘められた力をわかっていたつもりだったが、これほどとは思わなかった。思わぬ再会になってしまったが、とても嬉しく思う」
ふたりは近くの椅子に腰をおろして、今までのことを語った。
レダの挫折や、治癒士としての日々。ローゼスの冒険者としての活動と、妹分との出会い、そして怪我をして大変だったこと。
笑い話もあれば、眉を顰めるような酷い話もあった。
だが、ふたりはお互いの経験を聞き逃すまいと耳を傾け、語り合った。
「あの、お父さん」
「ミナ」
「お話中ごめんなさい。ティーダ様のお使いの方が来て、ギルド長さんを捕まえたって」
「ありがとう」
話に割ってはいることを気まずそうにしていたミナだったが、彼女が伝えてくれた情報は重要なことだった。
「そうだ、ローゼス。紹介するよ。この子は、ミナ。俺の大切な娘だよ」
「――ミナ・ディクソンです! よろしくお願いします!」
「ミナ、彼女はローゼス。俺の、大切な友人で恩人なんだ」
「ふふっ。恩人というならこちらのほうだ。ミナ、だったね。私はローゼス・ウィリアムソンだ。君のお父上とは一時だが、親しくさせてもらった」
にっこり笑顔を浮かべるミナに、ローゼスも微笑む。
「しかし、レダに娘か。お互い歳を取るものだな」
「ははは。そうだね。でも、ローゼスは昔のままだよ」
「ふっ。レダは口も上手くなったな」
照れたような笑みを浮かべるローゼスに、レダも釣られて笑った。
「パパぁ。食事はみんな食べ終わって、お風呂も終わったわよぉ。体力的に回復していない人は、このまま寝泊まりしてもらうことになっているんだけど、そもそも家ないみたいだから、どうしたらいいのかしらぁ?」
「……そうだね。その辺りは、ティーダ様と考えることにしよう」
「そうねぇ」
エプロンを身につけ、患者の世話をしてくれていたルナの報告に、レダは治療面では完全に終わったと安堵する。
あとは、住まいや今後のことだが、一介に治癒士にできることはないので、ティーダの判断に委ねることしかできない。だが、彼なら、この街の人たちを決して悪いように死はしないと信じている。
「ところでぇ、こちらの方はぁ?」
「おっと挨拶をせず申し訳ない。私はローゼス・ウィリアムソンだ。君もレダの娘かな?」
「ぶっぶー! 違いまーす! 私はぁ、ルナ・ディクソン! パパの妻よ!」
平たい胸を張って妻を名乗ったルナに、ローゼスは驚き目を見開くと、ルナとレダを何度か交互に見比べ、なにやら納得した。
「――なるほど。レダは幼妻にパパと呼ばせる趣味があるのか」
「その誤解は久しぶりだけど、違うからね!」
〜〜あとがき〜〜
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