32「ベニーの終わり」
「やあ、久しぶりだね、ベニーギルド長」
ナオミによってギルドを破壊されたベニーだったが、彼には傷ひとつなく、土埃に塗れているだけだ。
ユーヴィンの大通りで、へたり込むベニーの前に、怒りに満ちながらも優しい笑みを浮かべたティーダがいた。
「りょ、領主様」
「君に領主様と呼んでもらえるとは……感激だ。僕の領地から街をひとつ奪おうと計画しながら、僕の大事な民を酷使しやりたい放題。中には人身売買した記録もすでに入手している」
「な、なんことやら」
「残念だが、言い訳はできないよ。君の秘書官からすべて情報は届いている」
ベニーがハッとして自分の秘書官エミリアを探す。
エミリアは、ナオミが剣を振るったとき、背後にいた。つまり、何が起きるのか把握していたのだ。
つまり、ベニーに従うふりをした内通者だったということだ。
「裏切りやがったな、エミリア!」
「馬鹿なことを言うな、ベニー。エミリアはマールドの婚約者だ。こちらの味方に決まっているではないか」
「馬鹿な、そんな」
「君がよからぬことを企んでいることを知ったマールドとエミリアは、外に助けを求められずとも、いつか今日の日が来るように準備をしていたんだ」
絶句しているベニーにティーダは近づくと、固く握った拳を思い切り振るった。
ベニーの頬から鈍い音が響き、彼が地面に倒れる。
「とりあえず一発は殴りたかったのでね。本音を言うと殺してしまいたいが、それはまたの機会にしよう」
「ま、待ってください、領主様」
「君の話を聞く気はないよ。君に言いように使われた冒険者の大半は、私の自慢の治癒士が治療した。亡くなった者たちは残念だが、怪我を負っていた冒険者たちはすべて癒した」
「ば、馬鹿な」
「君にはいろいろと吐いてもらわなければならない。人身売買をした相手は既にわかっているが、証言が必要だ。君の協力次第で、命が長らえることをよく理解しておくように」
「領主様! 俺は、ダンジョンを見つけることで、領地のお力になれればと!」
悪事を暴かれたベニーは、あくまでも領地のためにやったと言い始めた。
この場には、ティーダをはじめ、テックス、ボンボ、ナオミを中心に、ギルドの傍若無人を見てきた住民たちが囲んでいる。
ティーダがいなければ、ベニーは袋叩きにされていただろう。
「なるほど。領地のためか、ではさっそく結果を見せてくれたまえ」
「そ、それはまだ、お時間が?」
「……君は実に無能だね。怪我人の数以上の冒険者を酷使しながら、結果を出せていない。出したのは、負傷者だけだ。最近では、周辺のモンスター討伐も疎かになっていたようだね。通りで、アムルスのほうにモンスターが流れてくるわけだ」
「だ、ダンジョンを探すのには時間がかかるのです! 時間さえ頂ければ、必ず結果を!」
「いや、結構だ。すでにダンジョンの場所は知っている」
「――は?」
ベニーが間の抜けた声を出した。
「私の家族ともいえる仲間にダンジョンのありかを知っている方がいてね。さらに言うと、ダンジョンは特定の条件を満たさなければ見つけられないし、入ることができないようだ」
「な、なに」
「つまり、君がどれだけ犠牲を出しても見つけられないのだよ。わかったかい?」
「う、嘘だ、嘘だ」
「信じてもらう必要はない。君は拘束し、尋問する。素直に罪を認めることをお勧めするよ。さて、私たちはこれからダンジョンに行ってくる。残念ながら、君の名前は決して残らない。ああ、足を引っ張った愚か者として我が一族の歴史に名を刻んであげよう」
「う、うわぁあああああああああああああああああああああああ!」
ティーダの言葉をどこまで受け入れたのは定かではないが、ベニーはもう後がないとわかたのだろう。懐から短剣を抜くと、ティーダに襲い掛かる。
しかし、いつの間にか眼前にはナオミがいた。
ナオミがにぃっと笑ったと同時に、ベニーの顔面に衝撃が走り、意識を失った。
〜〜あとがき〜〜
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