26「驚きの再会」③





「ああ、そんな、そんなことって……ローゼス!」


 レダは、力無く横渡る、恩人である女性冒険者の傍らに膝をつく。

 汚物に塗れ、肉を腐らせ異臭を放ち、髪や身体が汚れていても一目でわかった。

 故郷にふらりと現れ、冒険者になるきっかけをくれたローゼス・ウィリアムソンに間違いがない。

 彼女のおかげで今のレダがある。

 大切な娘、妻、家族がいるのも村の外に出たからだ。

 かつては、ローゼスと再会できてもどんな顔をしていいのかわからなかったレダだが、今は違う。胸を張って、頑張ったんだ、と言える。だからずっと会いたかった。会いたかったのに、このような再会はあんまりだ。


「……れ、だ?」

「ローゼス、俺だ。レダ・ディクソンだよ。覚えているかい? 昔、小さな村で君と話しをした、レダだよ」

「……あ、れ、だ。れだ……おぼえ、て、いる。見ない、で、くれ。わたし、は、もう」


 乾き、ひび割れた唇でローゼスはレダの名を呼んでくれた。

 覚えていてくれたのだ。同時に、変わり果てた己の姿を見られたくないという彼女の気持ちもわかる。

 レダは、気を引き締める。


「お、おっさん、姉御と知り合いなのか? 頼む、なんとかしてあげてくれ。あたいをモンスターから庇って、こんなことになっちまったんだ。姉御だけなら、こんなことにならなかったのに。あたいが、あたいが悪いんだ!」


 少女は自分を責めていた。きっと言葉通りのことがあったのだろう。

 責任を感じていたからか、それとも根っからの善人なのか、少女はローゼスの面倒を見続けた。尊敬に値する。


「あたい、馬鹿だから……騙されて金も取られて、治療する金なんかない。食べ物だって、盗んでやっとなんだ。頼む、姉御を、姉御を助けてくれ。助けてくれた、あたいのすべてを捧げるから、奴隷でもなんでもなるから!」


 少女の言葉を受け、レダはローゼスから一度目を離し、涙を流す少女の肩を軽く触れた。


「俺は治癒士だ。きっと君の知る治癒士と違うかもしれないが、きっとそれはいい意味でだと思ってほしい。僕が君たちに求める見返りは――元気になること、それだけだよ」

「……おっさん。嘘だろ、そんな治癒士いないよ」

「じゃあ、君が初めて出会うまともな治癒士が俺だってことだね。光栄だ! さあ、ローゼス。驚いたし、悲しんだけど、それはあとにしよう。まずは君の治療だ!」


 無理だ、と彼女の唇が動いた気がした。

 しかし、レダはローゼスを『治療できる自信と確信があった』。




「――完全治癒!」





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