19「ダンジョンの存在」①




「しかし、貴様の証拠をどこまで信用できる?」


 ティーダの疑問に、マールドが控えていた兵士に目配せをする。

 すると、彼はいくつかの書類を取り出し、ティーダに渡す。


「……これは?」

「ベニーのもとに、内通者がひとりいる。おかげで情報は最低限だが入ってくるんだが……情報を僕が君に伝えられなかったことだけが悔やまれる」

「マールド……わかった。その書類はこちらで預かろう。ダンジョンのあるなしを含めて、一度話を内々で――」

「話に割って入ってすまないが、私から君たちへ大変重要な話がある」


 ティーダとマールドのやりとりを見守っていた中、男性の声が割って入った。


「こら、ノワール。ティーダ様たちのお話をじゃましちゃだめだよ」

「すまない、ご主人。しかし、重要なのだ」

「そうなの?」

「うむ。超重要である」


 声の主は、元魔王であり現黒猫のノワールだった。

 ティーダは事前にノワールのことを知っていたので驚きはしなかったが、初見のマールドや兵士たちは愕然としていた。

 無理もない。子猫が流暢な人語を喋っているのだから。


「ちょっとぉ、本当に重要な話なのぉ? どうでもいい話だったら、聖剣ですぱーんさせるわよぉ」

「あまり私を脅さないでもらおうか! 君のベッドで失禁するぞ!」

「やめて!」


 ルナが茶化すと、低い唸りのような声が返ってきた。

 勇者ナオミに倒された魔王であるノワールは、ナオミと聖剣がトラウマで、今だに油断すると失禁するのだ。


「ノワール殿、重要なお話とは?」


 ノワールを魔王だと知るティーダが、丁寧な言葉で尋ねる。

 すると、ノワールは少し気まずそうな声を出した。


「言うか言わまいか悩んでいたんだが、この際伝えておいた方がいいと考え、教えておこうと思う。――私は、この地に眠るダンジョンの場所を知っている」

「――なんですって?」


 この場の全員が絶句した。

 もしかしたら、ダンジョンなど眉唾物で存在しないと思っていた者もいたはずだ。

 だが、魔王はあるといった。

 そして、知っているとも。


「待ってくれ、そのニャンコがどこの誰だか知らないが、本当にダンジョンを知っているのか!?」


 叫んだのはマールドだ。

 ダンジョンの真偽をこの中で最も疑っていたのは、他ならぬ彼だっただろう。


「ニャンコ……いや、今はいい。うむ。知っている」

「どこにあるのだ!?」

「話を聞いていて、そのベニーとやらが探している場所で合っている」

「ならばなぜ見つからない!?」

「――それは、私の魔力で封じているからさ。私がその封印を解かない限り、君たち人間では見つけることは絶対にできない」


 断言する、元魔王に全員が絶句した。





 〜〜あとがき〜〜

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