11「出発」
「――改めて、ありがとう、レダ。そして、みんな」
ユーヴィンに出発する日、集まったレダたちに改めて感謝を伝えるティーダ。
この場にいるのは、ティーダを筆頭にレダたちディクソン一家、ボンボおじさん、テックスをはじめ一流の冒険者たち。見送りに来てくれたフィナ、ギルド職員たちと、ローデンヴァルト辺境伯家夫人と娘たち、そして家人たちだ。
早朝だが、レダたちの出発を知っているアムルスのひとたちも、わざわざ見送りにきてくれている。
「レダ、診療所は任せておけ。フィナ殿も手伝ってくださるので、問題ない。むしろ、俺の出番があるかって感じだがな。ユーリ、お前も気をつけるんだぞ。少し抜けているところがあるから、心配だ」
「ありがとう、ネクセン。診療所は任せるよ」
「うん。ぼちぼちやるね」
診療所に残るネクセンが苦笑して見送ってくれた。
頼りになる同僚に診療所を任せることができるのなら、心強い。
ネクセンには内緒だが、彼がひとりで診療所を切り盛りできるのであれば、もうひとつ診療所を建ててそこの主になってほしいとティーダが考えているとレダは聞いている。
かつては治療費の高い治癒士で、アムルスでも嫌われていたネクセンだったが、地道な活動で今ではすっかり慕われている。
彼なら任せて構わないだろうと思う。
レダとユーリは、ネクセンと握手を交わした。
「――では、いこう!」
それぞれ、しばらくの別れをすませ、ティーダの掛け声でアムルスを出発する。
馬車に揺られて数日。途中でキャンプを挟む予定だ。
直線距離ならば時間はさほどかからないが、今回は女子供もいることと、万が一ユーヴィンに住まう冒険者がティーダたちを快く思わずなにかしてくる可能性があったので慎重に行動することとなっている。
キャンプを繰り返し、ちょっとした小旅行みたいなノリになりながらも、レダとミナは、かつてアムルスにくる道中を思い出して懐かしいと微笑むひとときがあった。
「ここまでくれば、もうすぐユーヴィンだ。もう安心だろう」
ティーダが、冒険者たちと周囲を伺いながら安心した時だった。
ルナ、ナオミ、テックスがそれぞれの得物を手にして臨戦態勢をとった。
「どうした?」
「領主様ぁ、残念だけど、お客さんよぉ」
ルナがいつも通りの声音を出しつつも、ナイフをくるくる指で器用に回す。
「ユーヴィンを目の前にしているのに、こんなところで!」
「まあ、気にしなさんなって。自然の中じゃ、人の気配なんてわかりづらいって」
嘆くティーダの肩を、テックスが叩いた。
レダはミナ、ヴァレリー、アストリットを背に庇う。
治癒士として暮らしているが、元は冒険者だ。
家族を守るために、賊ならば慈悲はかけずに攻撃する覚悟はあるので、いつでも撃てるように魔力を高める。
しばらくして、
「ようよう、てめぇら。金目のもんと、女を俺たちによこしな」
明らかに冒険者崩れと思われる野盗がぞろぞろと現れた。
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