12「到着」






「……まあ、こうなるよね」


 三十人ほどいた野盗たちが、全員地面に転がっていた。

 ルナ、テックスと冒険者たちだけでも十分すぎたのだが、そこに勇者ナオミとダークエルフのボンボおじさんと過剰戦力だった。

 レダは、非戦闘員を守っていたが、出番はなかった。


 野盗たちは基本的に殺しても問題ないのだが、冒険者崩れだったことからティーダが手心を加えるように頼んだので全員が半殺しで止められていた。

 無論、痛い目を見たから無罪放免になるはずはなく、しかるべき場所で裁くこととなる。

 余罪があれば、最悪の場合死罪になるのだろうが、問答無用で殺してしまいたくないというのがティーダの考えだった。

 しかし、ティーダもただ甘いわけではない。

 野盗たちのアジトを吐かせ、盗まれたもの、囚われた人がいれば助けようと思っていたそうだ。


 リーダーと思われる男は、剣士のようだったが、剣は刃こぼれし、鎧もボロボロだ。

 しばらく風呂どころか、水浴びもしていないようで酷く匂った。

 そんな男は、最初こそ強気に出ていたのだが、テックスに指の骨を一本折られると観念してアジトから余罪まで全部吐き出した。


 金品こそ奪っているが、人間は食糧もなくまともに人質にはできず、欲望を発散したくともそもそも腹が減っていてそれどころではないという。

 ただ、金品を奪う際に、刹那的に女性を、ときには男性を襲ったことはあるようだ。

 残念なことに、殺しも何度かしているらしい。


 裁判を受ければ、死罪はほぼ確定だと男たちもわかっているのか「殺せ!」と叫んだが、レダたちはあえて殺さず、彼らを動けないように念入りに縛った上で、ひとりの冒険者をアムルスに引き返させて、野盗を回収することにした。

 ただ、レダたちの目的はあくまでもユーヴィンなので、テックスを除いた冒険者たちをこの場に残して、目的地に向けて出発をした。


 ――そして、数日後。


 レダたちは、野盗に警戒しながらも襲われることなく、予定通り目的の街ユーヴィンに到着したのだった。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る