10「ボンボおじさん」②
ヒルデたちの叫びに、なにを当然のことを、ボンボが驚いた顔をする。
「私たちダークエルフは魔術に長けているからね。私も例外なく魔術師だよ。まあ、自慢するほどではないが、弓も少々得意だがね」
ポージングを取りながら、謙遜するボンボだが、実際は魔術も弓もかなりの才能だった。
若い頃は、フィナと争う日々だった。
「えっとぉ、ボンボさん」
「なにかな、ルナくん」
「じゃあ、その鍛えまくった身体は戦闘に使わないん、ですかぁ?」
「無論だとも!」
「えっとぉ、なんで?」
戸惑い気味のルナ、いや、一同に対してボンボは愚問だとばかりに言い放った。
「私の美しい肉体に傷がついたらどうするのかね!」
「濃いわぁ、めっちゃ濃いキャラだわぁ」
おじさんは相変わらずだね、と笑顔のレダが、ボンボのような筋肉ダルマにならなくてよかったとルナは安堵した。
意外とたくましいレダだが、物には限度がある。
細く引き締まった肉体のレダがいいのだ。もちろん、いずれ中年になってお腹が出ても愛情は変わらないが、筋肉を愛する筋肉ダルマになられたら、愛情が薄れずともさすがに引く。
レダはレダのままでいいのだ。
「というわけで……筋肉好きの気味の悪いおっさんダークエルフだけど、実力だけは折り紙付きだから安心してねー。人間を下に見るつもりじゃないけど、勇者のお嬢ちゃん意外だとまともに戦える人っていないんじゃないかしら」
「えっと、パパは?」
「ははははは、俺なんて手も足もでないよ」
勇者ナオミはさておき、レダも冒険者として強い部類に入るのだが、それでも手も足もでないとなると、相当の実力者だ。
フィナは同族だからと言って、おべっかつかうような性格ではない。
ならば、ボンボは純粋に強いのだろう。
「安心したまえ、レダのワイフたちよ。私から人間を攻撃することはしないが、君たちに一筋の傷さえつけないと約束しよう」
「お、お願いしますぅ?」
話すたびにポーズを変えるボンボを変人とは思うが、レダとフィナが太鼓判を押すのなら信頼することにした。
ルナ、ヒルデ、ナオミは自衛に問題ない。最悪、ミナ、ヴァレリー、アストリットを守ってくれればいい。
一同は揃って礼をした。
「さあ、堅苦しいのはこのくらいにして。夕食はボンボおじさんの歓迎会だよ。おじさんの好きな鶏肉と、野菜料理をたくさん用意したから、楽しんでね」
「感謝するよ、レダ。お礼に、私の考えた独自のポージングを披露させていただこう!」
こうして少し変わり者のボンボおじさんと楽しいひと時を過ごしたディクソン一家。
意外にもボンボのポージングは芸として好評で、拍手喝采だった。
ただ、翌朝。
「お姉ちゃん、お姉ちゃん! わたしもボンボおじさんみたいにムキムキになりたい!」
と、興奮冷めやらぬ気配でミナがそんなことを言うので、ルナが必死で思い直すように言い聞かせる一面があった。
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