7「家族と相談」④
「みんな、聞いて欲しい」
朝食の席で、レダは食卓を囲む家族たちに向かいユーヴィンの街で治癒士として赴くことを告げた。
「だと思ってたわぁ」
「お父さんならそう言うと思ってたよ!」
「ふっ、レダらしい」
「さすがレダ様ですわ!」
「ま、レダならそう言うでしょうね」
「レダらしくていいと思うのだ!」
「にゃーん。レダはよき男のようだ」
一大決心を打ち明けたはずだったのだが、家族の反応はあっさりしたものだった。
みんなレダがティーダの助けを断ることなくユーヴィンへの出向を受け入れるとわかっていたらしい。
「あらあら、みんなレダのことをよくわかっているのね」
これにはフィーナも苦笑している。
「えぇ……みんな、俺がどうするかわかってたなら言ってくれれば……」
「それじゃあ、パパの判断にならないじゃない。あたしたちはあくまでも予想していただけよぉ。パパがパパの意思で決めたんだから、家族は黙ってついていくのよぉ」
「――ルナ。みんな、ありがとう。っていうか、全員一緒に来てくれるの!?」
「あったりまえじゃない!」
ルナ、ミナ、ヒルデ、ヴァレリー、アストリットまでは予想していたが、ナオミとノワーツも一緒とは思わなかった。
「私は奥さんじゃないけど、家族なのだ! レダたちを守るぞ!」
「愛らしい子猫になってしまったとはいえ、腐っても元魔王だ。主たちに近づく不届きな輩は塵にしてくれよう」
「か、過剰戦力すぎる」
下手をしたら、ユーヴィンの街が更地になるのではないか、と不安になる。
同時に、これで家族に大事が起きないだろうと安心する。
さらに、ボンボおじさんも合流してくれるのなら、どれだけユーヴィンに冒険者が溢れていたとしても、征服できるだろう。
「みんな、ありがとう。俺も嬉しいし、きっとティーダ様も喜んでくれるよ」
「この場にはいない兄に代わって、感謝申し上げますわ」
レダに続き、ヴァレリーが立ち上がり頭を下げた。
やはり、領主の妹であるゆえに、ユーヴィンの現状を憂いていたのだろう。
彼女の表情は安堵が浮かび、うっすら涙を浮かんでいるように見えた。
「仕事の前にティーダ様のところに行ってくるよ」
「あ、わたくしもお供しますわ」
「私が護衛につこう」
レダ、ヴァレリー、そしてヒルデが朝食後にローデンヴァルト伯爵家に向かうことが決まった。
「今夜にもボンボを呼んでおくから、みんなに紹介するわね」
「それがいいね。インパクトのある人だから、食事の席で紹介を……食事の席かぁ」
「ふふふ。食事が喉を通るといいわね」
ボンボという人物を知らぬルナたちだが、レダとフィナの言葉のやり取りで若干の不安を覚えた。
「あ、あのね、パパ。そのボンボって人はどんな人なのぉ?」
「そうだね」
レダは顎に手を当てしばし考えると、
「すごく変な人!」
脳裏に思い浮かぶボンボの姿を自分の語彙力では説明できないと判断し、短い言葉でまとめた。
「きっとびっくりするから、楽しみにしているといいわ!」
悪戯っ子のように笑うフィナに、ルナたちは少しだけボンボというまだ見ぬダークエルフに警戒を覚えた。
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