59「王女と貴族とダークエルフ」
フィナにからかわれていたのだと思うと、ルナとヒルデは大きく息を吐き出した。
さすがに義母となるフィナに認めてもらえないというのは堪える。
「レダが本当の意味で独り立ちしちゃったのは寂しいけど、幸せになってほしい気持ちは誰よりもあるもの。お嫁さんたちと不仲になってギスギスするのは私の好みでもないしねー。ただ、ちょっとだけからかったって罰は当たらないでしょ」
「ほ、ほどほどにお願いします」
「あまり趣味の悪いことを言わないでもらおうか!」
どうやらペースはフィナにあるようだ。
自分やヒルデたちに振り回されても、レダが笑顔で対処できるのはきっと、この母親に振り回されてきたからだろうとルナは察した。
「ところで、他のお嫁さんたちにも会いたいのだけど、いるのかしら?」
「えーっと、そろそろ戻ってくること思うけどぉ」
外出しているヴァレリーとアストリットが時間的にそろそろ帰宅すると返事をしたその時、
「レダ様のお母様がいらっしゃってるってお聞きしたのですが、どこですのぉおおおおおおおおおおおお!?」
「ちょっと、待って、まだ心の準備が。自分の家族とも最近までうまくいっていなかったのにレダのお母様って、準備、準備させて。心が無理でも、せめて服だけでも」
診療所から聞き覚えのある声が響き、続いてネクセンが「喧しい!」と怒鳴ったのが聞こえた。
「あらあら、元気な子たちね」
「……フォローするわけじゃないけど、普段からパパを支える大事な奥さんのひとりだからぁ」
「一応、言っておくが、この町の領主の妹と、この国の王女だぞ」
「――え? レダって、逆玉の輿なのぉ!?」
フィナが目を丸くした。
さすがに、息子が貴族の令嬢と王女を嫁にしていたとは思わなかったらしい。
「ヴァレリー、アスト、こっち! こっちに来なさいよ!」
「あ、ルナちゃん! レダ様のお母様はいずこに!?」
「待って、せめてお化粧させて! 私、今、ほぼスッピンなのよ!」
どったんばったん、と騒がしく診療所から裏庭まで慌てふためきながら移動してきたヴァレリーとアストリットは、見知らぬ少女を見つけて静かになった。
「あ、あら、こちらの可愛らしい子はどなたですか?」
「ルナのお友達?」
他者の目があることに気づいたふたりが、たたずまいを直し、咳払いをする。
そんな彼女たちに、ルナとエルザはいたずらっ子のように笑った。
「彼女が、パパのお母様よ!」
「よろしくねー」
ヴァレリーとアストリットは、お互いに顔を見合わせてから淑女らしからぬ叫び声をあげた。
「えぇええええええええええええええええええええええええ!?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます