54「レダの疑問」①
ルナとフィナは、じぃっとお互いを見つめ合うとゆっくり口を開いた。
「なにこの子、艶やかな褐色の肌、銀髪、整った顔、でもどこか愛嬌のある感じが超可愛いんですけどぉ!」
「この子……一見すると可愛いだけの美少女だけど、私にはわかるわ。そのしなやかそうな体躯は戦闘者のそれね。美少女の癖に戦いの実力まで一級品。なんて逸材なのかしら」
「あなたも結構やるわねぇ。しっとり汗ばむ肌には色気があるしぃ、潤んだ瞳は男を放っておかないでしょうねぇ。なによりも、日々可愛くあろうとする努力が見れるわ。外見も内面も美少女なんてやるじゃない」
「ふふふ、それはあなたもでしょう」
「まあね!」
ルナとフィナはお互いを褒め合うと、力強く握手を交わした。
同じ褐色の美少女同士、通じるものがあるらしい。
「お姉ちゃん、この人はね、パパのお母さんでお姉ちゃんなんだって!」
「――んんんん? なぁにそれ?」
「育ての親よ」
「え? パパの育ての親って……こんな美少女が? パパのほうが年上に見えるんですけどぉ?」
信じられないとばかりにフィナの頭から爪先まで見回すルナの気持ちは、レダにもわかる。
今でこそ、レダはいいおっさんになったが、かつてはフィナよりも子供、いや、赤ん坊だった。
フィナが特別なのではない。
レダの育った小さな村の全員が、昔から外見に変化があまりないのだ。
「ふふふん! それはね!」
ぴこんっ、とフィナの尖った耳が動いた。
レダとルナ、そしてミナもどこかで見たことのある耳の形に気づく。
「――エルフ?」
「ちょっと惜しいわね! 私はね――ダークエルフなのよ!」
ルナとミナは目を丸くし、
「えぇえええええええええええええええええええええええええええ!?」
レダは、大絶叫した。
「えっと、パパ? もしかして気付いてなかったとか?」
「……お父さん?」
「あ、あははははは、残念ながらまるで気付いていなかったよ」
顔を引きつらせるレダに、フィナは大きく嘆息する。
「小さい頃はさておき、いつ気づくかなーって、みんなで内緒にしていたんだけど、村を出るまでなーんにも、気づかなかったわねぇ」
「パパ……鈍感ねぇ」
「あれ? じゃあ、お父さんの育った村の人がみんなダークエルフさんなの?」
「もちろん! 人間はレダだけだったわ」
「……三十を過ぎて知る、衝撃の事実に驚愕を隠せないよ」
レダは、村人たちと違いがあることは承知していた。
髪の色、肌の色、成長しない肉体、レダとはまるで違う村人たちだ。
しかし、若干の疎外感を感じても、大きな問題とは思わなかった。
みんなは大切な家族だったし、見た目が違うことで差別されたことなどない。むしろ、可愛がられまくっていた。
「私たちダークエルフも、エルフ同様に隠れて暮らしていたからね。あまり知られていないのも無理はないわ」
「あら? でも、じゃあ、どうしてパパは?」
「……さっきから思っていたんだけど、奥さんにパパって呼ばせるのってどうなの? あれ? でも、パパママって呼び合っていちゃついてる夫婦が村にも……」
「そんなことはいいからちゃっちゃと答えないさいよ!」
「せっかちね。まあ、いいわ! レダはね、――天から降ってきたのよ!」
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