「コミック4巻発売記念」




 レダ・ディクソンは、とある村で生まれ育った青年だった。

 これといった特技はないが、人に好かれやすい笑顔を絶やさない、お人好しな正確であるため、村中の誰もが彼を好きだった。

 小さな村だ。

 村全体がひとつの家族のようだ。

 しかし、家族だからこそ、レダが少しだけ疎外感を感じていた。


 まず、村人たちは外見年齢が大きく変わらない。

 この二十年で、赤子から青年に大きく成長したレダと違い、村人たちは物心ついた頃の姿のままだ。

 かつて一緒に遊び、悪さをした友達たちよりも、レダは大人になってしまった。

 無論、レダが成長するからといって、問題はない。

 友達は友達だし、家族は家族だ。それは変わらないとしても、寂しく思うのは無理のないことだった。


 レダは孤児だ。

 両親の顔も名前も知らない。

 ある日、天から落ちてきたと聞いたことがあるが、きっと捨てられていたのだろう。

 血の繋がりのある家族を恋しいと思ったことはない。

 家族がいるから、だ。


 家族と一緒に、畑を耕し、毎日笑って過ごす。

 そんな日々が続くことになんの不満も抱いていなかった。


 ――だが、突然、レダに転機が訪れる。


 モンスターと化した巨大な猪が村を襲った。

 魔法をかじっているレダがみんなを守ろうと戦おうとしたその時、目の前でモンスターが一刀両断された。

 なにが起きたのかわからず困惑しているレダは、次の瞬間目を奪われた。


「よう、大丈夫か?」


 その人は、どこまでも晴れた空のような髪を持つ美しい女性だった。

 身の丈ほどの大剣を軽々と持ち、白金の鎧を血で赤く染めながらも気品を感じる美女だった。

 年齢はレダと同じか、少し年上だろう。

 美しさに反して、口調こそ乱暴だったが、話をしてみると愛嬌よく笑うとてもいい人だった。


 彼女の名は、ローゼス・ウィリアムソン。

 若くして一流の冒険者だった。

 レダは、彼女が村に滞在した三日間、多くの話をした。

 村の外を知らないレダにとって、彼女の日々は、まるで御伽噺のように聞こえた。

 胸が熱くなった。

 自分も彼女のような冒険をしてみたい、と。


 恐る恐る、そんな淡い希望を口にしたレダに、ローゼスは笑顔を浮かべてくれた。


「あんたは性格が甘いから冒険者には向いてねえよ。でもさ、その力を求める人は多いだろうな」

「えっと?」

「――頑張れよ、って言ったんだよ!」


 村を見渡せる小さな丘で、彼女に応援された時間は一生忘れることはないだろう。

 ローゼスは、その後、レダと再会の約束をして村から去っていった。

 その日の夜、育ての母と村の家族たちに冒険者になりたいと打ち明けた。

 村人総出で大反対を喰らったレダだったが、説得を続けること一ヶ月。ようやく、了承を得た。


 そして、レダは、号泣する母と家族たちに見送られて村を出た。

 その後、うだつの上がらない冒険者として四苦八苦し、最後には冒険者パーティーを首になるも、大切な家族となる少女と出会い人生を大きく変えることになる。




 ――だが、未だにレダはローゼスと再会できていなかった。




 そのことだけが、結婚し、順風満帆な日々を送るレダの胸の片隅に、しこりとして残り続けていたのだった。






〜〜あとがき〜〜


本日4月15日(金)、コミック4巻が発売致します!

何卒お手に取って楽しんでいただけると幸いです!

よろしくお願い致します!


今回のお話は、今後に繋がるお話でもあります!

展開を楽しみにお待ちください!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る