55「レダの疑問」②
フィナの言葉に、レダ、ミナ、ルナが言葉を失い唖然となった。
「あら? もっと驚くとか反応があると思っていたのに」
拍子抜けしたとばかりに残念がるフィナだが、三人は反応しないのではなく、反応できないが正しかった。
数秒して、ようやくレダが口を開いた。
「待って待って、俺が降ってきたってどう言う意味?」
「レダは、私たちが親子じゃないことはわかっているでしょ?」
「それは教えてもらったし……外見も似てないからね。そこは今更疑ってないけど」
孤児であることは知っていた。
だからと言って、悲観したことはない。
フィナをはじめ、村人たちから我が子同然に愛情を注いでもらって生きてきた。おかげで反抗期らしい反抗期も迎えず育ったのだ。
「あの、お義母様」
「お義母様……いい響きね」
外見が幼めの成人したての少女が、外見年齢は完全に幼女のダークエルフを「義母」と呼ぶ、なんとも言えない光景にレダは反応に困る。
レダの心情はさておき、ふたりの会話が続いていく。
「天から降ってきたっていいましたけど、どういう意味ですかぁ?」
「そのままよ。嵐の日に、空から赤ちゃんだったレダが光に包まれて降ってきたの。びっくりしたわ。一応、村の近くを何日もかけて探したけど、家族らしい人は見つからなかったから何かの縁だと思って育てることにしたの」
「光に包まれってとか、ありえないんじゃ」
「私も不思議だったわ! 名前もわからないし、とりあえずおっぱいをあげてみたけど、私は吸われても出なくて困ったの」
「そりゃ、普通は出てこないでしょうよ!」
そもそもなぜ赤子に吸わせたのかが気になるが追求はしなかった。
「迎えもこない。家族も見つからない。ならもう我が子として育てましょう、ってことでレダと名付けて愛情をたっぷり注いだのよ!」
それ以上のことは、レダの知る通りだとフィナは言った。
そして、レダの謎は現在でもそのままだ。
なによりも、なぜ空から光に包まれて降ってきたのかもわからずしまいだった。
最初こそ、どこかに人間がなにかしらの理由でレダを遠くに捨てた可能性もあったと考えていたようだ。嵐の日に捨てたとなれば、確かに理解ができる。
だが、レダを包んでいた光は、雨風から赤子の身体を守っていたと言う。ならば、悪意を持って捨てたとは考えにくい。
なんらかの理由で、レダを手放すことになったのかと思ったが、何年経っても迎えにこないのでその可能性も考えにくいと言う。
「も、もしかして、お父さんって天使様なのかな!?」
目を輝かせてミナがそんなことを言う。
天から降ってきたなどと言われると、確かに想像してしまう。
「いや、さすがにそれはないよ」
「あーら。そうかしら」
「お母さん?」
「レダは私にとって、村にとって、天使のように可愛い子供だったわ。そして、それは今もかわらないのよ」
母性を感じさせる笑みを浮かべてそう言ったフィナの言葉に、レダは自分を拾ってくれたのがこの人で良かったと思った。
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