43「翌朝の女子会」②




「というわけで、今夜からお願いね」

「え? ルナちゃん? どういうことですの?」


 ルナの言葉の意味がわからず、ヴァレリーが思わず聞き返す。

 はぁ、とルナは大きくため息をつくと、


「話聞いてたぁ? 次はあんたたちの番よ!」


 確定事項のように大声をあげた。


「ちょ、待て! それでいいのか?」

「なによ、ヒルデ。あんただって、パパと結ばれたいんでしょう?」

「それはそうだが、せっかくルナがレダと結ばれたばかりなのに、もう私たちのことまで気遣ってくれるのか?」


 ルナの気持ちは嬉しいのだが、幸せなふたりの間に強引に割って入ろうなどと思うような女性はこの場にいない。

 そもそも、ちゃんとレダに娶ってもらう気満々であるため、せっかく幸せ絶頂のふたりを邪魔しようなどとは微塵も思わないのだ。


「あのねぇ。だーかーらー! こっちの身が持たないって言ってんでしょう! パパはね、野獣なの! いえ、魔王よ! ベッドの魔王なのよ!」

「る、ルナ、落ち着け。診療所まで響く!」

「あたしは足腰限界なの! 幸せだけど、連続は死ぬわ! 幸せ死するわ! 臨むところと言いたいけど、パパの子供を産むまでは死ねないから!」


 というわけで、


「あと、よろしくね」

「そんな勝手なことを言って。そもそもレダは承知しているのかしら?」


 アストリットの疑問に、ヴァレリーとヒルダもそうだそうだと頷いた。

 レダが、ルナを含めたこの場の女性たちを、ちゃんと異性として見てくれているのは知っている。

 いずれ妻として受け入れてくれることもだ。

 だからと言って、ルナに想いを告げ相思相愛になったレダが、翌日に他の女性に手を出すだろうか、と考えてしまう。

 しかし、ルナはにやり、と確信めいた笑みを浮かべて、


「いけるっしょ! 今のパパは、なんていうか今まで我慢していたタガが外れていると思うからいけるいける! それに遅かれ早かれあんたたちだって奥さんになるんだから、気にしないの!」

「ルナ」

「というか、あたしを助けて!」

「結局そこか!」


 ヒルデがツッコミを入れると、ルナが笑い、ヴァレリーが、アストリットが笑い、最後にヒルデも大笑いした。

 同じ男を好きなったが、その前にすでに家族だった。

 出会ってまだ一年も経っていないのに、ずっと一緒にいたような気さえする。

 きっと運命だったのだろう。

 レダがミナを保護し、親子となり、ヒルデが出会い、ルナが家族として加わり、ヴァレリーがアストリットが、そしてナオミと魔王までも家族だ。

 それぞれ事情を抱え、立場も違うが、レダの前ではありのままでいられる。

 それがどれだけ幸せなことなのか、今更口にする必要もない。


「ルナの気持ちはわかった。その気持ちを無碍にはせん! ――というわけで、今夜は私がさっそく」

「お待ちください、ヒルデちゃん!」

「なんだ、ヴァレリー?」

「それはさすがに抜け駆けでしょう」

「そうか? だが、ミナの次に出会ったのは私なので、順番としては」

「出会った順番を言うはずるいですわ! 私は動けなかったんですもの!」

「私だって、エルフの里から出ていなかったぞ!」


 額を突きつけて唸り合う二人を見て、ルナは「やっぱりこうなったわねぇ」と苦笑した。


「レダ様は、昨晩ルナちゃんと一夜を過ごしました。それはいいですね?」

「うむ」

「連日幼女ではレダ様も物足りないでしょうから、ここはわたくしが」

「誰が幼女よ!」

「誰が幼女だ!」


 幼女扱いされて、ルナとヒルデが抗議の声を上げた。


「成人しているのは存じていますけど……やはり、ここはわたくしのような成熟した女性が!」

「確かにお前は大人に見えるが、貧相な体型なのは同じだろう。ならば、アストリットに任せるべきではないか?」

「――貧相じゃないです! スレンダーと言ってください! 確かに、アストリット様のほうが肉付きはいいですけど!」

「肉付きがいいとか言わないで! 私だってスレンダーよ!」


 そんなやりとりとりをしながら、最後にはジャンケンで勝負をつけた女性たちは、次々とレダと結ばれることとなった。

 しかし、ルナ同様に誰もがベッドの魔王レダ・ディクソンに敗北してしまい、翌朝には疲労困憊で動けなくなることが続く。

 こうして、ルナと結ばれたことをきっかけにレダは、ヴァレリー、ヒルデ、アストリットとも結ばれたのだった。



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