42「翌朝の女子会」①




「……あのね、パパ凄かった」


 ディクソン家のリビングで、学校のためこの場にいないミナと、冒険者業を元気に行っているナオミを除いた女性たちの前で、ルナの言葉が重々しく響き渡った。


「それは、どういうことですの?」


 ごくり、と生唾を飲み込んでヴァレリーが訪ねる。

 いや、彼女だけではなく、ヒルデとアストリットも興味を隠せない様子で、ルナの声を待った。


「――絶倫」

「まぁ!」

「ほう!」

「……すごいわね」


 言葉少なく、しかし、わかりやすい単語に、女性たちの瞳が輝く。


「いうまでもないけど、昨晩は幸せだったわ。同時に、死ぬかと思った!」

「そんなにですの!?」

「そんなによぉ。はじめはいい雰囲気で始まったんだけど、いざとなったらパパの理性というかあれこれがぷちんと切れちゃってね。ま、まあ、そうなるように頑張ったんだけど――今思うとそれが間違いだったわ」


 ルナは、昨晩のことを思い出すだけで、今も違和感が残っている下腹部が熱を帯び、疼く自覚があった。

 初めて、心から愛する人と結ばれたルナは、間違いなく幸福の絶頂だっただろう。

 しかし、彼女を待っていたのは、また違った意味での絶頂の連続だった。


 今まで、男女の経験をしたことのないレダは、冒険者らしくなく、娼館の類も利用したこともなければ、いきずりの関係を持ったこともないまま三十年生きてきた。

 それは特別珍しいことではない。

 金を払ってでも異性を抱きたいと思う人間は、性別問わずいるし、そういう欲求を発散させることを悪いと思わない。


 だが、レダは女性を金で買うことはしなかったし、気軽に付き合い関係を持つということもしなかった。

 不器用と言えばそうなのだろうが、いい意味でいうならば、純情なのだ。

 そんなレダだからこそ、心から愛おしいと思うルナと結ばれたことは彼にとっても幸せだったのだろう。


 ――ゆえに、たがが外れた。


 最初こそ、初めて同士の初々しいものだったのだが、次第にレダの勢いが増していき、二回、三回と果てても止まらなかった。

 ルナも経験がないため、そういうものかと思い、夢中でレダを求めた。

 しかし、レダが十回ほど果てると、さすがにおかしいとルナも思ったようだが、すでにそのときにはレダのたがは外れていた。

 結局、数え切れないほど果てたレダが我にかえったとき、眼下に広がったのは、褐色の肌を白く染めた愛する少女がとろけた顔をしている姿だった。


「レダ様すごいですわぁ! きっと赤ちゃんがたくさんできますわね!」

「ふむ。これなら、妻が数人いても問題あるまい」

「……べ、別に興味はないけど、参考になったわ」


 それぞれが感想を言いつつも、ルナを内心ではうらやましく思っていた。


「断言できるわ。四人がかりでパパに挑んでも、敗北するのはこっちよ!」


 確信めいてそんなことを言うルナに、ヴァレリーたちは何度目になるかわからない生唾を飲み込むのだった。



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