39「レダとルナ」①
お見合いパーティーは若干の混乱もあったものの、無事に終了した。
カップルも複数でき、今後の展開に期待したい。
意外なことにテックスがひとまわり年の離れた女性を見事ゲットしていたことだ。
テックスが、というよりも女性がテックスに気があるようで、猛アタックしたそうだ。
冒険者であり、領主の覚えもよいテックスはアムルスの町では人気がある。
後輩冒険者から、依頼した商人から、飲み屋や娼館の女性たちから、となにかと頼られる存在でもある。
レダもそのひとりであり、気さくで頼りになる兄貴分のテックスになにかと世話になっていた。
そんな彼だからこそ、女性にアプローチを受けてもなにも疑問に思わない。
一方で、レダを驚かせたのはミナだった。
ルナの付き添いで参加した最年少の参加者でありながら、多くの男性に囲まれていた。
ミナを慕うケイトが壁になろうとするも検討虚しく、十代後半から二十代半ばまでの男性が積極的に話しかけていたのだ。
レダはあまり知らないが、ミナは人気者だ。
アムルス診療所に行くと笑顔で出迎えてくれることや、ルナと美少女姉妹ということでなにかと話題に上がる。
まだレダが診療所を構える前にも、治療の手伝いをしていたのを知っている住民は多い。
懸命にレダを手伝うミナに好感を抱く人間は多く、中には歳が離れていながらもミナを想う男性もいたのだ。
とはいえ、普段からレダにつきっきりであるミナとなかなかお近づきになれる機会はなく、今回のお見合いパーティーは絶好に機会だった。
結果的に、ミナは複数の男性からアプローチを受けることとなった。
レダは、姉のルナのような小悪魔要素がミナにもあるのか、と困惑していたが、実母であり聖女であるディアンヌなどは「さすがわたくしの娘です」と感涙していた。
年の離れた男性に人気の娘のどこに、感涙する要素があったのかいまいち不明である。
「さてと」
お見合いパーティーも無事終わり、片付けを手伝ったレダは、ティーダから一杯やらないかと誘われたが、丁重にお断りを入れた。
「ルナに会いに行きたいんで」
そう言ったレダに、ティーダは親指を立てると、
「決着をつけてこい!」
と、送り出してくれた。
決着って、と苦笑するレダだったが、ティーダに頷くと診療所に戻ることにした。
幸い、ミナはティーダの家族が一緒にいてくれているのであとで迎えにくればいい。
レダからの告白を受けて気絶したルナは、女性陣たちによって家に担ぎ込まれていたのだ。
夜風を浴びながら、すれ違う人々に声を掛けられる。
こうして歩くだけで、アムルスに馴染んだ実感がある。
これからもこの町で暮らしていきたい。
できることなら、死ぬまでずっと。
そして、できることなら大事な家族と一緒にいたかった。
そのための一歩として、レダは今夜自分の想いに決着をつけることにした。
知り合いのドワーフに無理言って用意してもらったものを途中で受け取ると、診療所の前で足を止めた。
家の中からは女性たちの賑やかな喧騒が響いているのがわかる。
おそらくお酒でも飲んでいるのだろう、いつもよりもテンションが高い。
「さてと、ティーダ様じゃないけど、決着をつけますか!」
レダは頬を叩き意気込むと、緊張がちに一歩を踏み出したのだった。
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