38「ルナの本気」②
「じゃなかった! 違う、いや、違くないけど、あー、もうっ、つい逆プロポーズしちゃったじゃない! パパを籠絡してプロポーズしてもらう作戦だったのにぃ!」
プロポーズをしてきたルナは、正気に戻ったようにはっとすると、顔を真っ赤にしてその場に蹲み込んでしまった。
「こら、ルナ! 抜け駆けだぞ!」
「そうですわ! まずはレダ様にわたくしたちを改めて意識してもらって、みんなでわけわけする作戦でしたのに! 肝心なルナちゃんが籠絡されちゃってどうするんですの!」
「外野うっさい!」
(まさかそんな計画を立てていたなんて、女の子って怖いなぁ。だけど、うん、ルナにちゃんとけじめをつけないといけないよね)
レダにとって、今の関係はとても心地よかった。
ミナという可愛い娘がいて、ルナ、ヒルデ、ヴァレリー、アストリット、ナオミたちがいる。
もとは赤の他人だったのに、今では家族と呼べることのできる大切な存在だ。
この心地よい関係に浸かり、いつまでもこのままでいたいと思っていた。
まだ一年にも満たない関係ではあるが、もうずっと前から家族だった。そんな気がする、もうレダにとって欠かせないみんなだった。
今回、お見合いパーティーに参加してみて、改めて彼女たちが魅力的なことは理解した。
いや、理解していたが、あまり考えようにしていたのだ。
だが、自分がこの心地いい関係に満足して停滞しているせいで、もう他の誰かが彼女たちと親密になったら――そう思うと、心がざわついてしまった。
きっとお互いに大切に思う気持ちは変わらない。
だが――寂しいだろう。
みんなのことが心から大切だ。
今まで以上にそう思った。
ならば、手放してはいけない。
「――ルナ」
「あ、はい、ごめんねパパ、ちょっとうるさい外野をシメてくるからちょっと待っててね」
「ははは、そんなことしなくていいよ。それよりも、ルナには俺の気持ちを聞いてほし良いんだ」
「パパの気持ち?」
緊張して口の中が乾く。
良い歳をしてなにしているんだ、と内心苦笑もした。
「ルナ、告白してくれてありがとう。すごく嬉しいよ」
「あ、うん。ちょっと照れちゃうんですけど」
「だから、俺の気持ちを、今日ここではっきりさせたいと思う」
「――へ?」
おそらくルナは、レダがこの場で答えを出すなど思ってもいなかったのだろう。
ルナたちはまだ若い、長期戦でレダと結ばれても問題ないと思っていたのかもしれない。
だが、レダはそうするつもりはなかった。
一度決めたら、もう迷わない。
それが、レダ・ディクソンだ。
「ルナ、俺と結婚してください」
外野から「は?」「え?」「嘘?」と聞こえた気がした。
そして、ルナは、
「え? ちょ、ま? え、本当に、あの、その」
まるで茹でられたのかと疑いたくなるほど、今まで以上に真っ赤になっていく。
そして、ばたん、と音を立ててひっくり返った。
「あれ?」
レダは呆然とした。
自分のほうからプロポーズをしなおしたのだが、肝心なルナが気絶してしまったのでどうすればいいのかわからなかった。
すると、どこからともなくお見合いパーティーの司会が現れ、ルナの脈を取り、反応を見る。
そして、レダの腕を取り、大きく掲げた。
「勝者、レダ・ディクソン!」
刹那、歓声が上がる。
「いや、なんの勝者だよ」
せっかくプロポーズしたのに、返事がもらえなかったレダはちょっとふてくされたようにそんなことを言うのだった。
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