36「お見合いパーティーのはじまり」②
お見合いパーティーがはじまった。
男性も女性も、好みの相手を狙い近づいていく。
レダは、いろいろ考えなければならないことがあるが、まずはミナに近づく男どもを一掃しなければならない。
「――というか、どうしてミナまでお見合いパーティーに参加しているんだろうねぇ」
成人前の少年少女も複数人参加しているので、おかしくはないのだが、父親としてせめてミナだけは一言言って欲しかった。
悪い男に引っかかってしまうのではないかと気が気ではない。
身内贔屓を抜きにしてもミナは可愛らしい女の子だ。
出会ったばかりの頃は、人見知りだったあの子が、今じゃ誰とでも親しくできる人懐っこい子に成長したのは感慨深いものがある。
まだ一緒に生活するようになって数ヶ月だが、大きな数ヶ月だったのだろう。
性格もそうだが、外見も子供から少しだけお姉さんに近づいた。
ルナやヒルデ、ヴァレリーやアストリットという大人の女性に囲まれているため、自然と大人びていくようだ。
そんなミナの評判はとてもいい。
学校でももちろん、診療所でも多くの人に好かれている。自慢の娘だった。
だからこそ、ミナによからぬ下心を抱いて近づく男がいないとは限らない。
すでに、ミナの周りには少年たちが集まっている。
ざっと見て、同い年から十五、六歳くらいまでの少年たちが、自分をアピールしたり、ジュールを渡したり、とにかく気を引こうと頑張っているのがわかる。
本来なら微笑ましい光景なのかもしれないが、少年たちの目的がミナであるため、レダは不安でいっぱいだ。
万が一、お見合いパーティーで彼氏ができて、早々に結婚――などになったら、寂しくて死んでしまうかもしれない。
「さて、かわいい娘に群がる虫たちを一掃するか」
指を鳴らして、いざ娘のもとに行かんとするレダの尻に蹴りが飛んできた。
「うわっ」
「おっさん、大人げないぞ!」
「……ケイトじゃないか。君も参加していたんだね」
「うん。あー、その、ミナが出るって聞いたから、いいチャンスだと思って」
「そう言えば、君もミナのことを好きだったねぇ」
「ちょ、好きとか言わないでよ恥ずかしいなぁ!」
エルフの少年ケイトは、出会った頃からミナに恋している。
ただ、あまりミナがケイトを異性として見ていないような気がする。
あと、この少年、頑張ってはいるのだが、ミナの前に出るとめちゃくちゃ緊張するのだ。そのため、よくわからない言動をするし、遠回しなことを言って首を傾げられることもしばしある。
だが、レダはそんなケイトのことをちょっと応援していた。
好きな女の子に、真っ直ぐに挑もうとする姿勢は感心する。
――もちろん、ケイトがミナの彼氏になるならいろいろ話は変わってくるが。
「おっさん、見ててくれよ。あんな奴らに俺は負けたりしないぜ。ミナのハートは俺がゲットしてやる!」
「あ、うん」
闘志を燃やしミナのもとへ向かったケイトだったが、実際近づいてみると、なかなか声をかけられずにウロウロしている。
あれではまるで飼い主とはぐれた子犬だ。
「残念だけど、ケイトとミナは進展しないようだね」
「あらぁ、わからないわよぉ」
「――ルナさん」
「ミナにとって、はじめての異性の友達なんだから、特別じゃない?」
「そ、そんなものなの?」
「そんなものなのよぉ。ま、あたしにもミナが誰を選ぶかとか、誰に恋をするのかまではわからないけどぉ、パパが心配しているような結果にはならないわよぉ」
「そ、そうかな? 来年あたりには子供ができました、とか言わないかな?」
「――どんな想像しているのよ。あの子がそんなこと……あー、でも、大人しい子に限って意外と」
「やめて! 聞きたくない!」
「ふふふっ、冗談よぉ」
「心臓に悪い冗談はやめてくれ!」
レダは、さっそくルナに振り回されて大きくため息をつくこととなった。
「さぁて、パパ。あたしになんか言うことなーい?」
問われたレダは、笑顔のルナをじぃっと眺めてから、降参したように言った。
「今日のルナはいつも以上に可愛いよ」
レダの言葉は正解だったのだろう。
ルナは嬉しそうに笑みを深めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます