15「ディアンヌの過去」②
レダが気になるのはひとつだけ。
ディアンヌがロナンによって弄ばれた結果ミナが生まれた。
しかし、なぜディアンヌではなく、ロナンがミナを引き取っていたのか、だ。
(聖女様がミナを引き取っていれば……と思わずにはいられないんだよな)
とはいえ、ミナがピアーズ子爵家にいなければ、ルナと姉妹として出会うこともなかっただろう。
そうなるとルナの心の支えがなくなっていた。
なによりも自分とも出会わなかったはずだ。
ミナと出会えたからこそ、今の生活があるのだと考えているレダではあるが、それでも娘の過去を思うともっとほかになにか選択肢がなかったのか、と思わずにはいられない。
「ミナが生まれる経緯はわかりました。ですが、なぜあなたが育てなかったのですか?」
レダの疑問に、ディアンヌが眉間に皺を寄せた。
「――教会はわたくしの妊娠をよしとしませんでした」
「え?」
「当時のわたくしは十代半ばの小娘です。そんなわたくしが、結婚もしていない相手と子供を作ってしまった……大きな問題になりました。わたくしの立場が聖女であることも、悪かったのです」
確かに、聖女が結婚もせず妊娠というのは醜聞になる可能性がある。
「ロナンに恋人が複数人いたことや、婚約者もいたことも問題となりました。そこで、ロナンに二度と関わらないことを条件に、わたくしはミナを出産したのです」
もっと、ディアンヌはもうロナンに関わるつもりなどなかったようだ。
しかし、ロナン側はそうはいかなかったらしい。
「ロナンは、いえ、ピアーズ子爵家はミナを欲しました」
「なぜですか?」
言い方が悪いが、遊んで捨てた相手の子供をほしがるような男ではないはずだ。
「聖女の子供が欲しかったようです。また教会との繋がりを求めていたようです。わたくしも全てを知っているわけではありません……申し訳ございません」
「いえ、そんな謝らないでください。しかし、ロナンはどうやってミナを?」
「教会には様々な境遇の人間がいます。わたくしのように力を授かった者から、食べることに困って教会の門を叩いた者、悪事を犯してしまい教会に閉じ込められている者も少なくありません」
なんとなく話の先が読めた気がした。
「ロナンは、実家が貧乏ゆえにシスターになった少女に声をかけました。彼女には幼い兄弟がいたのです」
「それって」
「はい。ご想像の通りです。ロナンは言葉巧みにその少女に近づき、実家にお金を援助し、手籠にしました。ロナンに入れ込んでしまった少女は、彼の言うままに生まれたばかりのミナを攫ったのです」
「――っ。なんてこと」
まさかそんな搦手を使ってまでミナを奪ったとは思わなかった。
予想以上のクズだ、とレダは内心吐き捨てた。
「ロナンは、ピアーズ子爵家でミナを育てる、自分の子であるからその権利があると主張し、教育費を請求してきたのです」
「……恥を知らないのか?」
「無論、誘拐です。当初はミナを返すように訴えました。ですが、ロナンはわたくしに、言うことを聞かなければミナに危害を加えると脅してきたのです」
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