53「国王の疑問」①
「世話になったな、レダ」
アストリットの治療から始まり、国王のアムルス来訪と、オランドと商人の下衆な企みが発覚するなど、忙しい日々を送ったレダは、王都に戻る国王を見送りに来ていた。
「ぜひ、またアムルスにいらしてください」
「そうしたいところだ。しかし、残念ながら私は王都ですべきことがある」
「はい」
「まず、キャロラインを手伝うつもりだ。オランドの件と、捕らえた商人を含め、相応の罰を与えるつもりだ」
国王ヒューゴは、もう少しアムルスに滞在したいようだったが、アストリットとキャロラインを狙うことに加担した商人を捕縛したことで、予定を切り上げて王都に戻ることにした。
アムルスに残るアストリットと離れることは名残惜しいだろうが、他ならぬ娘のためだ。
「もっとも、キャロラインがどこまで戦っているかにもよるがね」
「あの、差し出がましいようですが、キャロライン様ともどうぞ和解してください」
「……そのつもりだ。アストリット同様、キャロラインにも辛い思いをさせてしまった自覚はある。気を使ってもらい、すまぬ」
「いえ、大きなお世話でしたね」
「もっとも急に私が態度を変えても信じてもらえない可能性があるので、アストリットに手紙を書いてもらった。これで、一応は信用してくれるだろう」
苦笑するヒューゴ。
「アストリットはもうしばしアムルスに預けておくことにした。キャロラインの許可なく連れて帰るのもどうかと思うのでな。あの子のことを頼む。傷ついているだろうから支えになってやってほしい」
「俺はもちろん、娘たちもいますので、アストリット様のことはお任せください」
「ありがとう。君の娘たちは、実にいい子たちだな。私のようにならず、しっかりと育てなさい」
「ありがとうございます。努力します」
ミナたちを褒められて、嬉しくなる。
娘たちがいてくれれば、元婚約者のせいで傷ついたアストリットを元気付けてくれるだろう。
レダだって、できることならなんでもしてあげたいと思っている。
「――ところで、君の娘のミナだが」
「ミナがどうかしましたか?」
レダが首を傾げると、ヒューゴはわずかに躊躇いを見せてから口を開いた。
「このような質問をするのは気が引けるが、聞けば、血の繋がりはないとのことだな」
「はい。ですが、かわいくて大切な娘には変わりありません」
「うむ。それは、わかっている。君の愛情も疑ってなどいない。だが、ひとつだけ気になることがあるのだよ」
「気になること、ですか?」
レダの疑問の声に、ヒューゴが頷いた。
「レダは、聖女を知っているか?」
「それは、はい。王都で数年暮らしていましたから。ですが、顔もお名前も存じ上げません。しかし、聖女がミナとどんな関係が?」
「言うべきか、言わぬべきか迷ったのだが、話しておいたほうがいいと判断し、伝えておこう。驚かないでほしいが、ミナは聖女にあまりにも似ている」
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