これは、死した人間の魂を冥府へ導く『死神』の物語。
死神に魂はない。
降り積もる感情は日ごとリセットされ、彼らに想いという重石を抱くことを許さない。
理を遠くし、永年を積み重ねる彼らは、ただ務めを果たすために在り続ける。
そんな摂理の中。
物語の舞台に立つ『彼』は、務めを果たす死神に許された対価として、看取った魂から『色』を得ていた。
死の刹那、その生を象徴するように『色』を得る魂。
『彼』は魂そのものが産み落とす『色』で、キャンバスに絵を描く。
看取り、送り届けた魂が、末期の願いと共に『彼』に見せてくれたものを、確かに形にするために。
きっとその美しさをあなたに伝えるには、私の言葉だけでは何かが零れ落ちてしまうだろう。
だからどうぞ、『彼』が…… 死神が見た極彩色の美を、あなた自身の目で見届けてほしい。
魂を失い、がらんどうのまま立ち尽くす『彼』が、その空っぽを震わせて見出した鮮明な美しさを。
あなたの目は、その色に、どんな名をつけるのだろう?