第4話 微笑みを数える日

 街はクリスマスが近づいてソワソワしてる。私も心なしかソワソワしてる。やっぱりいいもんだよ、クリスマスは。家族や恋人と過ごす予定があってもなくても。キラキラして、赤くて楽しげで、だけど寒くて、だから温め合う日。白い息も赤い鼻もなんだかお約束のようで楽しくなる。

 私の仕事は数えること、ただひたすら数を数えてる。だから仕事柄街を歩いていてもいろんなものを数えてしまう。うん嘘、冗談だよ。うふふ、でもそうだね例えば間違いを数えたり、涙を数えたり笑い声やおやすみを数えたりする。今日は微笑みを数えようかな。微笑みだよ、大笑いではなく。ね、微笑んでみてよ。お手本見せろって?急にはできない。ふふ、ほんとね。


 ほほえみには

 ばくだんもあれば天使もある

 赤ちゃんとかね

 自然な笑顔

 微笑んで

 不意に見せる

 微笑んでくれた

 微笑ましい光景

 微笑まない

 微笑みが止まらない

 微笑んでほしい

 吠えないでよ

 頰笑みはどこ

 どこからどこまで頰笑みなのかな



 今日は頰笑みを数える日


 降ってきた雪が手のひらでとけた日

 あったかいココアを飲む日

 誰かの優しさを見つけた日

 誰かの間抜けを見つけた日

 微笑まれた日

 頬を涙が伝った日

 みんなで写真を撮った日


 あれは微笑んでなかったよ。あれは笑顔にならなくて中途半端になった口、だよ。微笑みってほらあの有名な絵のような。


 頰笑みを数えて

 数えているうちに微笑んで

 幸せになる

 たぶんきっと


 幸せであってるかわからないから

 たぶんきっとと

 言うのかも

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