第5話 涙を数える日

太ももにできるシミ


涙はどこ

こぼれ落ちるのはどれ

ペロッと舐めて

落とさないで

こらえて

さあ味わって

あなたのその口で


いいえ

私のこの口は

涙を数えるためのものではありません

私の口は私の口です

私の好きなようにつかいます



しょっぱい味覚

べろ

噛む

涙をこらえる

涙を噛みしめ

唇噛みしめ

涙目に

涙くん

涙ぐんだ

泣かないで

泣いていい

なくなく

無い無い尽くし

並だ波だ

ぺろっ


泣かないで

鳴かないで

吠えないで

行かないで

売らないで

切らないで

蹴らないで

撮らないで

見ないで

寝ないで

こないで



涙涙の日々や

泣きたいんだけど泣けなかったり

泣いたことないなんて

なかなかありえない


私の口は涙を舐めます

時にはしょっぱいでしょう

それでいい日もあるでしょう

その方がいい日もあるしょう

それではいけない日もあるでしょう


今日は涙を数える日


涙ってなんでしょうか

悲しいもの

そればかりじゃない

嬉しくても

あくびをしても

目をこすっても

笑いすぎても

玉ねぎ切っても


頬を伝う

目頭が熱くなる

にじむ

ボロボロこぼれる

ぽろぽろ落ちる

流れるように

ぐしゃぐしゃ

綺麗な顔して

赤くなった目

腫れぼったい目

鼻水と一緒くた

静かにうるさく


涙ばかりに気を取られて

勘違いしちゃいけません

泣きすぎは悪いことですが

泣かない人はいない

泣けない人もいる

泣いてしまうのも当たり前

どうにか涙を減らすために

これ以上泣かないために


涙を数えて

涙を拭いて

泣かないでと言うのです

たぶんきっと


泣きたい日もあるので

たぶんきっとと

言うのかも

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