第4話 久しぶりのデートの約束
【檸檬が遅れて来た恋を思い出させてくれた④】
山口君もレモンの蜂蜜漬けの事を覚えていてくれた。
初めて食べた甘酸っぱいレモンは美味しかったって言ってくれた。それがもし嘘だったとしても嬉しかった。
もっと話がしたいと思ったけどその日はお礼を言って家へ戻った。
私は子どもの頃から引っ込み思案で、
家で本を読むのだけが楽しみだった。
本を読むと何にでもなれる、お姫様にも探偵にも…そして殺人鬼にだってなれる、リアルの自分では出来ない体験を物語を読む事で感じることができる。
学校の休み時間も帰宅後も暇さえあれば本を読んでいるし今でもそれは変わらない。
高校時代の思い出は悲しいこともあったし、受験も二度と同じ経験なんかしたくないけど、あの頃だって頑張って生きていたんだ!
そう思いながらペダルを踏んだ。
その日からも、コンビニに寄ると彼の姿を探した。会えば少しだけど声を交わしたし、山口君から声を掛けてくれることもあった。
しかしそんな日々も長くは続かなかった、ある日いつもと同じように品出しをしていた山口君が声を掛けてくれた。
「今日を最後にこのコンビニをやめるんだ、とりあえず引越しはしないけどこれからはあまり会えなくなるかもしれないです」
「何か仕事を始めるの?」
「そうなんだ、アルバイトじゃ、生きていくのは大変だからね」と笑った。
理沙から聞いていたけど、山口君から仕事の話を聞くのは初めてだった。
帰り際に思い切って山口君に声を掛けた。
「明日良かったらご飯でも食べに行きませんか?チェーンのお礼もしてなかったし」
自分から誘ったのはもしかしたら初めてかもしれない、これまで異性だけでなく自分から友達すら誘うことがなかった、もちろん誘われると行くけど、私なんかが誘っても相手は喜ぶのかっていつも思ってしまう。
それなりに恋愛もしてきたけど、それは相手がマメに連絡してくれる人でないと長続きはしなかった。
女としても人間としても難ありだといつも思ってしまう。
その私が初めて掛けた言葉を山口君は嬉しそうに受けてくれた、「いいね、女子の方が新しいお店や美味しい店を知ってるから場所は頼んだ!」
「分かりました、任されました!」
山口君の言い方に笑いながら、返事をした。
明日は土曜日で仕事も休みだから12時に駅前で会う約束をしてコンビニを後にした。
店の中から彼は小さく手を振ってくれたから、私は自転車に乗って大きく手を振った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます