クリスマススペシャル 『プレゼント交換』

 ——この物語の少し後のお話——


「メリークリスマス!」

「「「かんぱーい!」」」


 去年のクリスマスは受験期真っ只中だったので、これと言った実感がなかった。

 その反動か、今年は俺の家でクリスマスパーティをやることになったのだ。

 メンバーは紅葉、来栖、和泉が来ている。狩谷も来たがっていたが、残念ながら体調を崩してしまったらしい。


「涼ちゃんも咲さんも、場所使わせていただいてありがとうございます」

「いいってことよ。この愚弟の友達なんだから、遠慮しないの」

「姉ちゃんの友達じゃないんだから、わざわざ仕事早上がりしなくてよかったのに……」

「いいじゃない、クリスマスなんだから」


 クリスマスだから。

 なんて便利な言葉なんだ。なんでも許せてしまう気がする。


「でも咲さん、予定とか大丈夫でした……?」

「大丈夫よ? 年長者が面倒見ないとだし、紅葉ちゃんたちと一緒なのは楽しいからね」

「そうだよ。姉ちゃんは恋愛下手だからね」

「うるさいぞ涼」


 姉ちゃんの拳をもらいながら、話題はプレゼント交換の話へ。

 いつかの林間学校のようにランダムも面白いと思ったけれど、予算内で一人ひとりに選ぶことにした。


「じゃあ早速俺からね」


 和泉には最近新しく出たディフューザーを、来栖には金額目一杯のうまい棒をあげた。


「おい、うまい棒の量はおかしいだろ!」


 来栖の文句を受け流しながら、プレゼントが進んでいく。

 来栖はみんなにシンプルめなデザインのかっこいいボールペンを、和泉は有名ブランドのチョコを持ってきていた。

 姉ちゃんはギフト券、紅葉は来栖と和泉にお揃いのハンカチを渡していた。


「あれ、涼ちゃんと菊原さんは交換しないの?」

「ほんとだしてないね」


 プレゼント交換が終わったところで、来栖たちが声を上げる。

 ……めざといカップルめ。


「……実は、もう交換し終えてるんだ」

「えっと、そういうことです」

「うわっ、調子に乗ってんなぁ!」


 お互いの冷やかし合いがありながらも、とても楽しいクリスマスパーティになった。



 ***



「じゃ姉ちゃん、送ってくるよ」

「はーい」


 夜が更け、解散した俺は紅葉を送るために一緒に外に出る。今日新調したマフラーを巻いて。

 一方紅葉は、これまた同じく今日新調した手袋をつけている。


「……行こっか」

「う、うん」


 その新しい姿に、気恥ずかしくなりながら一緒に歩く。


「似合ってるよ、そのマフラー」

「紅葉だって。その手袋でよかったでしょ?」

「ふふっ。……メリークリスマスだね」

「うん。メリークリスマス」


 俺が少し屈み、紅葉が少し背伸びをする。

 街灯によっててらされている俺と紅葉の影が、少し重なる。


 空から少しだけ真っ白な雪が降ってきた。

 笑い合う俺たちへの、ホワイトクリスマスのプレゼントのようだった。

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寄りを戻そうとする元カノが可愛すぎる件について 星宮コウキ @Asemu

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