第37話 城見学
神社での自然をたっぷりと浴びたあと、バスに乗って次の目的地へと向かう。
最近では神社やお寺だけでなく、お城でも御朱印のような、観光客向けのものが増えている。城内の展示も凝っていたり、宝物殿の開放だったりもしている。今向かっているお城も例に漏れず、かなり見学しやすくなっている。
「わぁ、綺麗! 涼くん見て見て!」
「見てるから落ち着きなって……」
私もお城マニアというほど好きだったわけではないけれど、実際に目の前にすると感動して、つい隣にいた涼くんを振り回してしまう。
「ちょっと紅葉、はしゃぎすぎだって」
「だって、すごく綺麗じゃない!」
桜ちゃんにも宥められながら、綺麗な天守閣の下で城内の入場を待つ。結構人気なようで、しばらく待たされるようだった。
「ねぇ、入ったらどこから見ようか!」
「くーちゃん、順路があるからそれどうりに回ろうね……」
自分でも恥ずかしながら、場内に入るまで私の興奮はおさまらなかった。
***
「本当に、ご迷惑をお掛けしました……」
天守閣に着いてから、今までのはしゃぎっぷりを反省して、休憩スペースで、涼くんと山田くんに向かって項垂れていた。
「まぁまぁテンション上がっちゃうのは分かるから」
「大丈夫でごわすよ」
「うぅ……。ほんとごめんなさい」
みんなに謝ってから、お城から外を見渡す。
城内を見渡せるのはもちろんのこと、遠くに綺麗な山脈が見えた。おそらく先ほどの神社があった山もあるのだろう。
「それにしても、展示すごかったね!」
「あぁ。紅葉ほどじゃないけれど、テンション上がったね」
「もう、それは言わないでってばぁ!」
城内には、お城のできた時代背景とその時代に起こった有名な戦い、地域の特産物の紹介などがあった。
「お待たせ!」
「私たちの分のお土産買ってきたよー」
しばらくすると来栖くんと桜ちゃんが売店から戻ってきた。
城内だけでなく外にも出店があるので、交換するお土産はまだなんなのかわからない。
……涼くんは何を選んだのかな。
「じゃあそれぞれ袋に番号を書いて、あみだくじをしよう!」
涼くんがテキパキと紙にくじを書いて、みんなが番号を選んでいく。
「じゃあせーので開けるよ?」
「「「「「「せーの!」」」」」」
私のは……はーちゃんのだ。
どうやら女子三人同士で回し合う形となった。
そして涼くんは山田くんと。来栖くんは自分のが当たっていた。
「げ。ネタ枠で『すっぱソーダ』にしたのに……!」
「おい来栖、特別に今飲んでもいいぞ、ほら」
「どうしたでごわすか、ほら、飲むでごわす」
「……すっぺぇ!!!」
男子たちが来栖くんをいじめてる中、桜ちゃんとはーちゃんが私に目を向けてくる。
「残念だったね、ふじーのじゃなくて」
「ちょっとくらいズルしても怒られないでしょう。やるとしたら次だね」
「ちょっと、そんなことしないってばぁ!」
確かに涼くんのお土産は欲しいし、私のも渡したい気持ちもあるけれど、他の人にも渡るリスクがある以上下手なものは買えない。
……でも。
「……私の運を信じるよ!」
なんたって、さっき神社で引いたおみくじが大吉だったからね!
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