第35話 朝食

 林間学校二日目の朝。

 俺と山田は、早速困難にぶつかることになる。


「んーむにゃむにゃ。あと五時間だけ……」

「来栖起きろぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

「朝食の時間過ぎてしまうでごわすよぉぉぉ!!」


 来栖がお寝坊さんだった。

 ……いや、そんな可愛いものじゃない。なんか、起きないという強い意志を感じるくらい、本当に起きない。

 中学の時は同じ塾だっただけなので、こんな一面は知らなかった。


「山田、和泉さんに頼んだら起きると思うか?」

「わからないけど、やってみる価値はあると思うでごわす!」

「よし!」


 俺らは、朝っぱらからグループチャットで助けを求めた。


 和泉さんが部屋に来て、「おはよ」と声をかけただけで来栖は起きた。

 ……助かったけど、来栖がもう和泉さんに染まってるのかと思うと、見せつけられた虚無感が強かった。



 ***



「おい、涼ちゃんも山田も朝から元気ないぞ? どうしたんだよ」

「……なんでもないよ」


 お前のせいだよ。

 そう山田も思っている事だろう。

 朝から余計な疲労をしてしまったけれど、まぁいいだろう。


 宿の朝食は和食の定食だった。

 卵焼きが特に美味しい。


「なんで旅館の卵焼きって美味しいんだろうなぁ」

「ね。茶碗蒸しも美味しいよ」

「私は味噌汁が一番好きだな。はーちゃんは?」

「あたしも味噌汁かな。最後の晩餐には味噌汁を飲みたいね」

「味噌汁で最後の晩餐なんて聞いた事ないけど、そんなに?」


 六人で机を囲み、日常よりも多い量のご飯を食べる。

 これから先に待っている楽しいことのためにエネルギーを貯蔵するために、なぜだか多い量でも食べられてしまう。不思議なものだ。


「涼ちゃん、結局いい案は思いついたのかい?」


 隣の来栖が、ひっそりと聞いてくる。


「今日中に決めるよ。方向性は見えてきたから大丈夫だと思う」

「お、それならよかった」


 そんなちょっとした作戦会議を終え、食べ終わったらみんなに声をかける。


「ちょっと提案があるんだけど、いい?」


 林間学校2日目のスタートだ!

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