第34話 女湯にて

「ふぁー! やっぱ温泉はいいねぇ!」

「こら、おじさんみたいなこと言わないの」


 班のみんなでトランプで遊んだ後、大浴場に来ていた。


「桜ちゃん、結構大胆に来栖くんにくっついてなかった?」

「さーちゃんもだけど、くーちゃんもなかなかだったよ?」

「えぇ?」


 深夜テンションというわけではないけれど、みんながお互いにお互いをいじりあう。


「はーちゃんは誰か好きな人いないの?」

「そうだよ。狩谷ちゃんの話、あんま聞いたことないかも」

「えぇー、そんな面白い話でもないよ?」


 そういいつつも、はーちゃんはぽつぽつと自分の過去を話し始めた。





「……それで自然消滅しちゃったってわけ」(4/1『嘘』参照)


 はーちゃんが話し終わったころ、私たちの間には沈黙が生まれていた。


「えっと、あたし変なこと言っちゃった? なんか反応してよぉ」


 そんなこと言われても、できるわけない。

 だって……。


「なんだか切なくなってきちゃったよぉー!」

「私もー!」

「そ、そんな大袈裟な……」


 桜ちゃんと私は泣きそうになりながら、手を取り合った。


「幸せになってね、はーちゃん!」

「私たち、応援するから!」

「だから、今はもう気にしてないほど過去のことだってばー!」


 珍しくはーちゃんが弱気なので、つい調子に乗ってしまったけれど。

 また一つ、仲良くなれた気がする。


「ね、クラスの男子で誰かに似てるとかないの?」

「えぇ? んー……」


 しばらく考えこむような仕草をした後、はーちゃんはこう答えた。


「流石にいないかなぁ! いたら今頃恋してるかも? えへへっ」


 そう答えた彼女の瞳の中にある切なさの理由を、私は知らない。



 ***



「二日目はどこ行くんだっけ?」


 話は恋バナから一転して、話は二日目の予定へ。


「二日目は観光地の探索かな。お土産とかも見れるはずだよ」

「「おぉー!」」


 最後の班行動は、色々と普段見られないものを見て回ろうと思って決めたのだ。


「それで? くーちゃんはふじーに何を買うの?」

「へ!? な、なんで?」

「なんでも何も、自由行動日にプレゼントできたらいいじゃない。ねぇ?」

「うん。あたしだったらそれすごいいいと思うんだけどなぁー!」


 二人とも、なんだか当たりが強いというか、押しが強いというか。

 はーちゃんはさっきの仕返しのつもりか!


「せっかく勝負の日なんだから、ちゃんと準備しないとね」

「うん。もちろん男子たちにバレばいようにね」

「ふ、二人で勝手に進めないで!」


 あまり意識していなかったけど、なんだか緊張してしまう。

 た、確かに、何かした方がいいのかも……?


「わ、わかんないよぉ〜……」

「あ、くーちゃんがのぼせてダウンしちゃった!?」

「からかいすぎたかな……」


 このあと、3人で仲良くコーヒー牛乳を飲みながら、体調が戻るまで涼んだ。

 そこでも色々話したけれど、……それは当日までの内緒!

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