第31話 具材係
来栖とさーちゃんペアをお米係に、くーちゃんとふじーペアをお鍋にと上手く分けられたところで、山田くんとあたしのあまりもの組は野菜を切る準備をしていた。
「ふぅー、なんとかうまい具合に分かれられたね」
「でごわすね。じゃあ、切りますか」
「そうね」
「……」
「……」
あたしが言い出したこととはいえ、知り合って間もない男子と二人というのはなんか気まずい。
ましてや共通の人の恋路を応援してるというだけで、お互いのこと何も知らないのだ。
……こういう時何話せばいいの??
「……えっと、山田くんのご趣味は?」
「最近は藤ヶ谷はんたちのサポートが多かったでごわすけど、基本は読書とかゲームでごわすね」
「そ、そうなんだ」
「狩谷はんは、普段本読むでごわすか?」
「あたしは、本はあまり読まないなぁ」
「そうなんでごわすね」
終わっちゃった。
でも、本読まないんだもんなぁ。
お互い無言のまま具材の準備を始める。
流石にこのままだと、これから先の林間学校の予定まで気まずくなっちゃう。
なんとか話さなきゃ……!
「「あのっ!」」
声が重なった。
お互いに顔を見合わせる。
***
「やっぱふじーがもっと男気を見せるべきなんだと思うんだよね!」
「わかるでごわす。来栖はんももっとしっかりしていいと思うでごわす」
結局例の二ペアの話で盛り上がった。
もどかしいような思うところを、ガタンと野菜を力強く切るとともに語っていく。
「ていうか、来栖とさーちゃんは気づかなかったなぁ」
「まぁ儂は以前から知り合いでごわすからね」
「いやぁ、みんな青春してんなぁ」
それに比べてあたしは……。なんて思うのは、みんなに失礼だ。今は素敵な仲間に囲まれて、楽しく過ごしていいんだ。
「……狩谷はんも過去に何かあったっぽいでごわすが」
「うん?」
「藤ヶ谷はんたちみたいに、良い人たちと出会えてよかったでごわすね」
「……うん! えへへっ」
噂をすればなんとやら。
来栖とさーちゃんがやってきた。
「狩谷ちゃん、用意終わったから手伝いに来たよっ」
「山田も、お疲れ様だな」
彼らだけではない。お鍋の準備を終えたふじーたちもやってきた。
「はーちゃん! 手伝いに来たよっ!」
「みんなで具材切った方が早いだろうと思って」
せっかく細かくグループ分けしたのに、結局一つに集まってしまった。
「もう、これじゃあ作戦の意味ないじゃん」
「まぁまぁ良いじゃないでごわすか。みんな一緒の方が楽しいでごわすよ」
「……そうだね!」
楽しい林間学校は、まだまだ始まったばかりだ
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